小説

F〜S間 F
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寝起き早々心配された



目を開いた瞬間、視界に映ったのは左側に映った枕と、
フィアナの心配気な顔と、彼女の手が重ねられた自分の左手。

寝起きだからか状況が飲みこめずに、
視界に映るものを把握するのに数秒ほど掛かった。


「・・おはようございます」
「・・・おはよう、」


しゃがんでいるらしいフィアナの声に返事をし、
空いている右手で目元を覆う。

何を見たかは覚えてないが、どうやら夢見はよろしくなかったようだ。
嫌に汗で背中に服が張り付いている。

重ねられたフィアナの手が離れた左手で、寝ていた自分の体を起こす。

心配げに俺を見上げていたフィアナが「すみません、」と短く謝る


「魘されているようだったので・・・起こそうか迷ったんですけど」
「いや・・構わない、」


胸元の服を掴み空気を取り込む。
ひんやりとした風が通り汗が急激に冷える。

これは即刻シャワーか。


「朝、後にしてもらっても構わないか」
「お気にせず。 数十分の前後はいつものことでしょう?
 ふふ、原因は主に私の寝過ごしなんですけど」
「はは」


笑い混じりのフォローに笑い返す。

夢で何を見たのか全く覚えてないが、どうにも張り付く服に眉を寄せる。

しゃがんでいた体勢から「よ、」と一言声を上げて、
立ち上がったフィアナの様子を見る。


「部屋に居るので声掛けてくださいね」
「あぁ」


会釈をして、部屋の扉から廊下へと出て行く、
フィアナの背中を見送り、ベッドから下りる。

クローゼットを開けようと伸ばしかけた左手の動作を止め、
ゆっくりと左手を開き、手の平を見せた。

剣使用者ならではのタコや、少し荒れた手は
所謂「男らしい手」というものなのだろう。

・・・・随分と細い指だったな。
あの手で戦う気なのか・・・全く女というのは。


「(・・止める理由もないが)」


溜息1つ、開いていた左手を軽く握り瞼を伏せる。

クローゼットから衣類を2、3枚取り出し、足早にと風呂場に向かった。
この時間から風呂入るのいつ以来だ。



(・・おい、フィアナ。 二度寝も程々にしておけ)
(・・・っは、 あ、おはようございます・・・寝てた・・)
(お前は案外寝落ちる奴だな・・昼寝してる印象も強い)
(え、私多分そんなに昼寝してな・・しゅ、週1くらいですよ)





 
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