小説

F〜S間 F
12ページ/14ページ




彼女を見て彼が思うこと



フィアナ・エグリシアという人間を拾い、
約4ヵ月半が経っただろうか。

その内の半分以上をこの拠点で過ごし、
他をグランセルで過ごしたが、
そのグランセルで何か思うところがあったらしい。

どんな思考回路で『それ』に至ったのかは
本人しか分からん話なので、推測の域に過ぎないが。

・・・恐らく俺は、気圧されたのだろう。
迷いなく決心に満ちた、年に似合わず凛とし、澄んだあの瞳に。

俺は彼女のあの瞳が好きだが、どうやら同時にあの瞳に弱いらしい。
比較的最近気付いたことだが。


さて。 拾ってから約4ヵ月半。
俺がフィアナに弓を教え、1ヶ月半が経とうとしている。

とんでもないスピードで上達していく彼女の力量は、
扱い始めた初心者にも関わらず、1人で街道を歩けるレベルに達した。

言い出したのは俺だが、
俺ではあるのだが・・・いや、まさかな。

たまたま偶然拾って居付いた奴に弓の才能があるとは。
人生何が起こるか分からないとは本当によく言ったもので。

流石に大型魔獣が相手となると全く歯が立たないと彼女は言う。

そう苦笑いしながら訓練部屋にこもって弓を引く。

『大型魔獣相手では歯が立たない』

そう言わなくなるのは何ヶ月先のことだろうか。
・・あぁ、後衛だから倒しにくいのは仕様か。


とはいえあまりの上達っぷりに、
余計なことを吹き込んでしまった気もした。

そう思う反面、フィアナの構え方は随分様になっており
綺麗な構えだ、と思うことも随分増えた。

狙う瞬間の真っ直ぐなエメラルドの瞳も。

化物を引き当てたと思う反面、
そうは思えないほど美しく見えることもあり、
才能や上達が恐ろしいと思う反面、努力も一番側で見てきた。

綺麗だな。
・・・・俺には少し眩しいか。

弓を引いて的のド真ん中を射抜いたフィアナは、
エメラルドの瞳を伏せて大きく息を吐いた。


「ふぅ・・・ レオンさん、お仕事せずに
 私の様子なんか見てていいんですか?」


彼女は笑いながら弓をしまい、俺の隣に座る。
どうやら休憩に入るらしく、傍に置いてあった飲料を手に取った。


「いいんだ。 ・・・随分と構えが安定してきたな」
「あ、やっぱそう思います? やっと体が覚えたらしくて」


レオンさんって教えるの上手いですよね、と言いながら
笑ったフィアナの横顔を、壁に背を付いて見ていた。


「・・・お前の飲み込みが早いだけだろう」
「またまた」


彼女は茶化すように笑いながら背伸びをして、
先程手に取った飲料に口をつける。

少しの眩しさに目を伏せた。





 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ