小説

F〜S間 F
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少女に悲劇を語った剣帝



「・・・・そうですか」


ハーメルのことを、闇を聞いたわりに、
彼女の反応は思ったより薄くて淡白なものだった。

体の後ろで手を組み、俯きがちに「そうですか」と一言。
ただその目には、少しばかり堪えていそうな色も映っている。


「・・・早かったか」
「いえ。 レオンさんが話したいと思ったのが
 今というならば、早いとか遅いとかないので」
「フ、よくできた娘だな」
「どういたしまして」


振り返り笑みを浮かべたフィアナ。 その姿に小さく笑う。
できた娘。 芋づる式に彼女のことも思い出した。

ふとフィアナが、後ろで手を組んだまま、俺の方へ振り返る。


「あの、少しだけ訊いていいですか」
「なんだ?」
「カリンさんって人と、私って似てるんですか?」
「何故それを訊く?」


問えば、少し言いにくそうに俯いた。
疑問符を浮かべた俺に、俯いたまま口を開いて。


「・・カリンさんと似てるから、置いてくれてるのかなって」


口ごもらせながら複雑な表情を見せる彼女は、少し珍しい。

歯切れが悪そうに言葉を並べるフィアナの様子は、
彼女が俺に抱く好意を妙に実感する。

彼女の述べる言葉を脳内で咀嚼してから、
瞼を重く閉じ、彼女の方に振り向いた。

すると正面から真っ直ぐに俺を射抜くエメラルドの色。

フィアナのこの瞳は好きだったりする。 言いはしないが。


「確かに時折垣間見える鋭さや、人への気の回し方、
 身に纏う雰囲気が似ていると思うことはある」
「・・・・」

「だがカリンはカリンで、フィアナはフィアナだ。
 ・・・これが答えでは不満か?」
「・・いえ。 充分です、嬉しいです」


やっぱり、という思いが宿った瞳で彼女は微笑んだ。
・・・その表情が、俯き目で困ったように笑う顔になった。

何を言い出すかと思えばぽつりと、抑え目の声量で。


「・・・自分だけを見て欲しい、って思っちゃう私も・・・
 大概我侭なんですよね。 ・・・すみません」
「・・何故謝罪の言葉が出てきたのか、理解できんな」
「・・・?」


控えめがちに俺を見上げた。
どういう意味だろう、と そう言いたげな顔で。
小さく息を吐き出した。


「誰しもが持つ感情の1つだろう。
 生憎俺はそれに応えてはいないが、想うだけならば自由だろう。
 だから俺に謝るのは筋違いだ」
「・・・・」


自分が応えない代わりに、彼女を許容するのが礼儀だと思った。

彼女は大きく目を開いて、少しポカンと呆けた顔をした後、
優しい表情で少しだけ俯き、また俺を見上げて笑顔を浮かべた。


「やっぱり私、レオンさんが好きです。 そういうところとか」
「・・・フン」


見上げた先は雲一つない快晴の空。
嗚呼。 彼女ではないが、今日も空が綺麗だな。





 
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