小説

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若き遊撃士達と捜索届



「行方不明の娘の捜索?」
「そう」


カルデア隧道を抜けて、ツァイトに辿り着いたエステル達。
ギルドで掲示板を見ると、一番最初に目に留まったその字面。

思わず読み上げてしまったエステルに、受付からキリカが頷く。


「お母様の話だとここ1週間ほどね」
「い、1週間も・・・?」
「この依頼はいつから?」
「5日前からよ。 遊撃士が何人掛かりかで
 捜索しているけれど、今のところ手がかりは0ね」

「・・・ねぇヨシュア。 気になるね、これ」
「うん。 街の外は魔物も居るし・・無事だといいんだけど、」
「詳しい話は依頼主に聞くといいわ。 時間が許す限り貴方達も調べて」


キリカが手渡した依頼主の家の地図を片手に、彼女達はギルドを出る。
地図を見ながら、2人は少し悩んだ表情を浮かべた。


「・・・工房とコレ、どっちから行こう」
「黒のオーブメントのこともあるし、工房長から話を聞いて、
 その後捜索の依頼主に・・ならどうだろう」
「ん、そうね。 そうしましょ」

「それにしても・・遊撃士が複数で調べているのに手がかり0って妙だね」
「そうなのよね〜、街の外に出れば魔物が居るし、
 市を超えるには門通らないといけないから、記録見れば一発だし・・・」
「仮に誘拐だとしたら声明が届く。 それも無いみたいだからね」







工房長に事情を話し、ラッセル博士を紹介されたエステル達は、
その孫であるというティータに道案内を頼んだ。

中央工房から出たエステルが、「あ」と思い出したように口を開く。


「あのさ、ティータちゃん。 ちょっと寄り道してもいい?」
「ギルドでもう1つ依頼を受けていてね、事情を訊きに行くんだ」
「あ、いいですよ。 えっと、どこですか?」

「キリカさんから地図貰ってたわよね・・っと、あったあった」
「・・・・フィアナお姉ちゃんの家?」


エステルが取り出した地図を目にしたティータはそう小さく呟く。
思わず顔を見合わせるエステルとヨシュア。

彼女は「あ」と小さく声を漏らした後、
「えっと、行きましょうか」と顔を上げた。

依頼主の家に到着し、自己紹介を済ませた後、
依頼主である母親は簡潔に現状を伝えた。

「娘のフィアナがここ1週間ほど行方不明」
「行方不明になった日は風邪を引いていて、
 夜に外の空気を吸いに行きたいと出てから帰ってこない」

事情を聞きながら、エステルとヨシュアは顔を見合わせる。
ティータは話を聞きながら、心配そうな表情を浮かべていた。


「・・・ティータちゃんは、フィアナさんって人とは仲がいいの?」
「あの、えっと、小さい時からお世話になってるお姉さんで・・・
 すごく、良い人で、・・突然、居なくなったりするような人じゃ、」


微かに震えるティータの声に、エステルが彼女の背中を優しく撫でる。


「参考までに容姿を拝見したいのですが、彼女の写真等はありませんか?」
「えぇ、ありますよ。 ・・これなら分かりやすいかしら、はい」
「・・・!」
「えっ、こ、この人・・!?」


手渡された写真に写る、依頼主の髪色とよく似た色のオレンジの長髪。
エメラルドのような翡翠色の瞳を見せ、こちらを向いている若い女性だった。

提示された写真に対し、明らかに反応を見せる2人に
彼女の母親が驚いたように食いつく。


「フィアナを知っているの!?」
「え、でも・・・ ねぇ、ヨシュア・・?」
「・・似てるよね、凄く」


写真を見つめる遊撃士2人に、母親は心配そうにこちらを見ている。

ヨシュアは昨日までルーアンで仕事していたこと、
その際、王立学園の学園祭で彼女を見かけたことがあることを伝えた。

学園祭が行われたのはつい最近、4日ほど前のことだ。


「そうなると・・市内に居る可能性は低そうだね。
 どうりで遊撃士数人掛かりでツァイト周辺探しても見つからないわけだ」
「え、でも、ちょ、ちょっと待って! 関所は・・!?
 あそこ通らないと市外には行けないし、乗船記録だって・・・!」

「一番不可解な点だよね・・・しかもその日、彼女は風邪で熱もあった。
 遠出ができる状態とは到底思えない・・・」
「・・・・・」
「・・あぁ、でも、よかった」
「よかった?」


安堵したように息を吐き出すオレンジ色の髪の女性に、
エステルは素直に疑問符を飛ばす。


「フィアナは、生きてるんですね」


心配そうな表情から一点、母親は初めて穏やかな表情を浮かべた。
安堵した彼女の表情は優しく、写真の女性の面影すら伺える。





(あ、 親子なんだ)
(いや、知ってたけど、当然なんだけど)





 
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