小説

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王女の人探し難航を極め



平たく言えば、『王女』としての私が好きな人だった。

王立学園の一生徒で本当は王女だった「クローゼ」ではなく、
最初から「クローディア王女殿下」を知っていた人。

王女を1人の人間として見てくれて接してくれた人。
エルベ離宮にお菓子を携え2回足を運んでくれた人。

心細い時に来て慰めてくれた人。

隣に居てくれた人。
笑顔が素敵な人。

今一番会いたい人。


「・・・っはぁ、」


フィアナさん。 フィアナさん。

会いたい人の名を心の中で何度も唱えながら、王都の中を走り回る。
女王生誕祭も目前に迫り、王都はどこも祭りの準備で慌ただしく動いている。

ギルドに直接訪問までして彼女の所在を訊ねたけれど、
受付のエルナンさんは彼女の存在すら知らなかった。

「情報が入り次第お伝えします」
そう言ってくれた言葉が叶うのはいつだろう。

だって、彼女はもう王都には居ないかもしれないのに。

王都を駆け回って、キルシェ通りに出るところまで来た。
ここまで来ると人気はほとんどない。

生誕祭前で安全のためと一掃された魔物の気配だってほとんどない。
王都の喧騒から少し離れたこの場所が、異様なほど静かに感じられる。

彼女の姿を見たという証言自体はいくつか貰った。
どれもこれも、ここ数日のものではないけれど。

しかも目撃情報の中で一番最新と思われるものは、
キルシェ通りの方面へと向かう姿だった。

その場に数秒立ち尽くした後、両手で顔を覆った。


・・・フィアナさん、フィアナさん。

他の誰でもない、貴女に伝えたいことがありました。

エステルさん達、遊撃士が来るまでの間、
私達を救ってくれてありがとうございました。

お祖母様のことを救ってくれてありがとうございました。

ちゃんとお礼が言いたかった。
もっと貴女と話がしたかった。

貴女の出身は? 好きな本は?
いろんなお菓子を運んできてくれた貴女の好きなお菓子は?

今度は、いつ会えますか?
ルーアンには立ち寄りますか?

お祖母様も居なくなった貴女のことを気にしていました。


もう一度だけでいいから、会いたかっただけなのに。





(はっくしゅ、)
(・・・風邪か?)
(いえ、ちょっと鼻がムズムズして・・噂されたのかな)

(・・そういうところは歳相応だな)
(はい?)
(安心する)
(?)





 
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