小説

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不安と不定期の1週間目



彼に拾われてから、結社の拠点で過ごすこと1週間が経った。

拾われた初日は、名乗る程度の自己紹介と休むだけで1日を終え、
2日目は彼の属する組織について詳しく聞かせてもらった。

4日目には王立学園の学園祭にお邪魔して、
それ以外はのんびり拠点で過ごさせてもらった。

レオンさんは定期的に拠点から姿を消すが、定期的に姿も見せてくれた。

手間取らせてるなと思いながらも、様子を見に来てもらえるのが嬉しい。
彼じゃないけれど、誰も居ないこの建物を私1人で使うには広すぎる。

今日、彼が拠点へと帰って来たのはお昼間だった。

ちょうど昼ご飯を終えた時、キッチンの入口から彼がひょっこり顔を出す。
いつの間に帰って来たのかと驚いて目を見開いた。

自室に戻るレオンさんの後を追って、そのまま部屋にお邪魔して、
定位置となり始めた横長のソファに腰を下ろした。

ソファの背もたれに寄りかかり、天井を仰ぐ形でふぅ、と一息付く。


「今日と随分と悩んでいるな」


小さく溜息を吐きながら、彼は私に向けてそんな言葉を掛けた。

素振りを見せたつもりはないのに気付かれたことに驚いて、
気付いてくれたことが嬉しかった。

首だけ振り返れば本棚の前に立つレオンさんと目が合った。


「分かりますか?」
「ぼんやりしているのが気になる。 考え事か?」
「・・・家族に何も知らせずに、1週間経ってしまったなぁって」


家族と言っても父は出張で家に居ないことが多いから、
家に居る人間は母くらいだけれど。

それも風邪を引いたまま、雨の降る夜に家を出たっきり。
もしかすると捜索届も出されて大事になっているかもしれない。


「帰るか?」
「それはまだいいかな」
「難儀な奴だな」
「ですよね」


苦笑いしながら返事をすると、微かに息を吐いたのが聞こえた。

突然行方をくらましたゆえに、直接会うのは気が引ける。
ただ、無事だということは伝えておきたい。

我儘だと思うけれど、今はまだ、彼の元を離れる気にはなれない。


「・・・あ」


ふと思いついた案に声をあげれば、彼が私へと振り向いた。


「あの、紙とペンをお借りしてもいいですか?」
「構わないが・・・、成程な」


少しだけ目を見開いて、すぐに納得した表情に変わった。
室内を歩き出すレオンさんの様子を見て、私もソファから立ち上がる。


「ふふ、ツァイスまで送ってくれます?」
「・・・手紙は送らんがお前なら送る」
「あら、配達じゃなくて護衛ですか」


部屋中央のテーブルに近寄ると、
彼は棚から取り出したインク、ペン、紙を一式テーブルの上に置いた。


「そろそろ故郷も恋しいだろう」
「・・・・はい」


思いがけない言葉を掛けられ、幾度か瞬きを繰り返して目を細める。

ペンを手に取り、テーブルに収められていた椅子を引く。

自分の前に紙を置き、いざ書き出そうとすると、
ふと思い出したように彼が「あ」と呟いたものだから顔を上げた。


「ついでだ、俺はしばらく拠点に戻れそうにない」
「あ、はい。 了解です」
「お前も連れて行く」
「え」





 
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