忍足と囲碁

□第4局
2ページ/3ページ

「でね、昨日そんなことがあったわけですよ」

私は早速昨日の出来事を侑士に話している。
今日はちっこいおまけ付きで。

「誰がちっこいだ!」
「あれ?聞こえてた?」

このちっこい赤髪おかっぱは向日岳人くん。侑士に、今日はおまけおってもええか?と聞かれ、特に断る理由もないので了承すると、前に話してたダブルスパートナーの彼だった。
私よりも少し身長が低く、ちっこいで正解なのに。と言うと、侑士がでかすぎるんだ!と文句言ってた。
岳人くんは侑士が彼女作るなんて…と驚いていた。
それから昨日の話をして、神崎って囲碁すんの!?ぽくねぇな!とこれまた驚いていた。
でも馬鹿にすることなんてなく、俺もテニスしてるから、お互い頑張ってんだなって言ってくれた笑顔がとても可愛かった。
流石侑士の友達だ。

「ほんで、歳上言うても、男やろ?送ってもらってなんもなかったん?大丈夫やったか?」

…流石に抱かせろと言われたことは言えない。一応彼氏だし、何より岳人くんがそういう話を出来なさそうだ。

「大丈夫だよ」

バレることはない。
侑士には、プロと対局できたことと弟子入りをお願いしたけれど断られたことだけを話しておいた。
この時はまだ、緒方さんが厄介な人だなんてひとつも思ってなかった。

「あ、そうだ。進藤ヒカルって生徒、1つ下で氷帝にいる?」
「進藤ヒカルぅ?男?女か?」

岳人くんは返事が早い。

「男の子だったかな」
「知らねぇなぁ。俺、氷帝には幼稚舎からいるけど、そんな奴聞いたことないぜ」
「岳人が知らへんのやったら俺かてわからんなぁ。俺中等部外部入学組やし」
「そっかぁ。じゃあ氷帝の生徒って訳じゃなさそうだな」
「そいつがどうかしたん?彼氏として、別の男の名前が出たんちょっと焼き餅やで?」

私は昨日緒方さんに尋ねられたことを話した。
こんなに格好いい侑士に焼き餅妬いてもらえるなんて光栄だな。

「進藤ヒカルって知ってるかって聞かれたの。なんかすごい切羽詰った顔してたから、なんか良くわからないけれど超重要人物なのかなーと」
「碁関係の人なんとちゃうか?」
「やっぱそうだよね」

氷帝の生徒じゃないとなると、どうして私に聞いてきたのだろう。そうなると私にはもうわからない。

「灯ちゃん、次移動やでそろそろ戻ろか」
「ああ、うん。行こっか」
「うえー、俺次政経だー」
「俺ら音楽やで」
「岳人くん政経嫌いなの?」
「ちょー嫌い〜。面白くねーもん」
「そう?覚えるだけでいいから私は好きだけど」
「灯ちゃん暗記得意なん?」
「うん、得意」
「お、かっこええなぁ。流石俺の彼女」
「おや、照れますねぇ」
「くそくそ!いちゃついてんじゃねーぞ!」

そして緒方さんのことなんかすっかり忘れて、私は教室へ戻った。
そしてこの後、昨日ラッキーな日だと言ったのを全力で取り消したくなることなんて、考えもしてなかった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ