忍足と囲碁

□第6局
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季節は8月。
夏休みに入った。

プロ試験予選の結果は、私は現在2勝しており後1勝すれば本戦出場のところまで来ていた。
侑士も着々と駒を進めており、この間は関東大会の応援に私も赴き、無事全国大会への切符を手にしていた。
私と侑士の休みが合えば軽くお買い物に行ったりお茶したりしていて、実に学生らしい付き合いをしている。
侑士って意外とキス魔のようで、どこでもかんでもちゅっちゅしてくる。
最初こそ、ちょっと!何してんの!と怒っていたものの、今では私も何も言わなくなった。
ちなみにそれより先はしていない(笑)
侑士だってお盛んな中学生な訳だし、私だって未経験で怖いなんて言う歳ではないし、処女って訳ではないのだけれど、2人の中で自然とその話が出ることはない。
侑士が私を大切に思ってくれていることもわかっている。
ただ、なんとなくお互いに忙しくてタイミングがないだけなんだと思う。
というか、私が本当に侑士のことを好きになってしまったことを先ずは伝えなくてはならない。
といってもそれもタイミングが…ね。
そんなことよりも、侑士は今カナダへ行っている。毎年恒例のテニス部合宿らしい。おいおいカナダって…と思うが、これが氷帝クオリティというか、跡部くんが全てやってくれるらしい。泊まるホテルも跡部家が経営するホテルなんだとか。もう色々と凄すぎる。凄すぎて何も言えない。別に大阪人じゃないけど突っ込みどころが満載過ぎる。跡部くんに、お前も来てもいいぜと言われたが、プロ試験があるからと断った。カナダ、正直行きたかったぜ。


さて、今日も2勝目を上げたプロ試験予選。夏バテで最初体調を崩して調子が上がらず負け続けてしまったけれど、後1勝すればプロ試験本戦出場だ。
1組の8位以内に上がれられてたら予選パスだったのに、今年は間に合わなかった。

そんな中、今日は帰りにいつもの皆でマックに来ていた。

「ネット碁?」
「ああ。やってる人いるか?」

と、和谷がネット碁の話をしだした。
前に皆でカラオケに行って以来、面倒くさくなって、呼び捨てで呼んでいる。

「パソコン触るけど、ネット碁はやったことないなぁ」

と、伊角くん。
他の飯島くん、フク、奈瀬も同じく知らないそうで。
ちなみに飯島くんは少し性格が悪そうな知的男子。フクは早碁が得意な小学生の男の子。私、フクとは相性がいい。打ちやすくて負けたことがない。

「私良くネット碁打つよ。暇さえあれば」
「へえ、神崎ネット碁やるんだ!プロの一柳先生もやってるんだぜ、知ってたか?」
「そうなんだ」

そこからしばらくネット碁の話題になり、和谷が面白いんだぜ、と熱弁して、皆はへえ〜やろうかな〜面白そう〜と反応を見せていた。
まさかこのネット碁が、あんなに大事になるなんて思ってなかったし、これが後に大きな出逢いに繋がるなんて、この時の私は思いもしなかった。
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