忍足と囲碁

□第1局
1ページ/4ページ

ああ、これは夢だ―――と、唐突に分かる時がある。

今がそうだ。
視力が悪いわけではないのに、視界がぼやぼやする感じ。

「あの」

ふいに声をかけられる。
振り向くとそこには…
…誰?

女性…かな。
でも声は低かった。男性かな。背も高いし。
すごく綺麗な顔してるけど、男性っぽい。
長い髪を腰で1つに纏めている。
烏帽子を被って、この着物の着方は…男性、それもかなり昔の人だ。
本で良く見るような、平安貴族のような着物。
唐衣、って言うんだっけ。

「私を…見つけてください」

あなたを?
あれ、声が出ない。

「会いに来てください」

どこにいるって言うの?
聞きたいことが募るまま、やっぱり声は出ない。

「ずっと、待っていたんです。
あなたが来るのを、待っていました」

待ってた…
何故だろう。
私もずっと、会いたかった気がする。

「灯」

どうして…名前を…

「私を…見つけてくださいね…」

白い光に包まれたかと思うと、私の意識はそこで途絶え、次に目が覚めた時には夢のことなど全て忘れていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ