忍足と囲碁
□第1局
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ああ、これは夢だ―――と、唐突に分かる時がある。
今がそうだ。
視力が悪いわけではないのに、視界がぼやぼやする感じ。
「あの」
ふいに声をかけられる。
振り向くとそこには…
…誰?
女性…かな。
でも声は低かった。男性かな。背も高いし。
すごく綺麗な顔してるけど、男性っぽい。
長い髪を腰で1つに纏めている。
烏帽子を被って、この着物の着方は…男性、それもかなり昔の人だ。
本で良く見るような、平安貴族のような着物。
唐衣、って言うんだっけ。
「私を…見つけてください」
あなたを?
あれ、声が出ない。
「会いに来てください」
どこにいるって言うの?
聞きたいことが募るまま、やっぱり声は出ない。
「ずっと、待っていたんです。
あなたが来るのを、待っていました」
待ってた…
何故だろう。
私もずっと、会いたかった気がする。
「灯」
どうして…名前を…
「私を…見つけてくださいね…」
白い光に包まれたかと思うと、私の意識はそこで途絶え、次に目が覚めた時には夢のことなど全て忘れていた。