Book01

□いっそ僕を愛してみてよ
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「好きで居るのが、辛いっていうか〜、ダメっていうか〜…ーー」

テレビでインタビューを受ける彼女は、悲しそうに、しかしそれでも嬉しそうにそう困った笑顔をしていた。

「好きで居るのが辛い恋なんて、しなければ良いのにな〜…」

テレビを只、偶々見た。それだけだった。本当に偶々。



――――――――――



「卓弥〜?」

「なに?しんたくん」

歌詞を捻り出す為に握ったペンを机に置いて顔を上げた。

「っ!?」

「卓弥?」

近い。

顔が近い。

思わず少し反りぎみに距離をとった。

いや、まてよ、

なんで

距離をとる必要が

アル?

「い、いやいやいやいや〜…」

「おーい、卓弥?何がいやなの?」

「へ?いや、なんでも、ないよ?」

どう頑張ってもそれは、それは無いだろう、自分!

「卓弥?もしかして…熱っ!?」

今までとっていた距離をさっと埋めて、しんたくんの顔がドアップになった。

「え!?ちょっ…〜〜っ」

「ん〜、ちょっと熱あるな」

ドキドキ、する。

ドキドキ。

「卓弥?顔も赤いよ!」

少し緊迫したような声でそういう。

「辛い」

「つ、辛いって、どうしたのっ」

「好きになっちゃ、いけない人をすきになった、から」

「……………」

「…し、しんたくん?」

少しムッとした、それでいてとても苦しそうな顔で、少しうつむいたしんたくん。

「好きになっちゃいけないヤツを好きになるなら、



―――――――――――




いっそ僕を愛してみてよ










いや、もうあなたが好きなんです。


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