レジェンズ
□巡り巡って
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時計台を後にし、シオとシロンは街へと繰り出していた。
無論、シロンはねずみの姿だ。
―ドラゴンの姿でうろつくのはさすがにヤバイよな。
「他のレジェンズ達もちっこくなってんのかな」
「ガガガ」
シロンが首を振る。
「ねずみの時は何喋ってるか、分かんないのが難点だな」
「ガガガ!」
シロンが何か言っていても、ねずみの時はねずみ語なる言葉を話すため、シオには理解出来ない。
シロンはシロンで伝わらないのが歯がゆいのか、飛行帽を被った頭をガシガシかいている。
「まぁまぁ」
そんなシロンをシオはなだめる。
「とりあえず、『ワニの穴』に行ってみるか…」
「ガガ?ンガガ!」
「……(何言ってるんだろ)」
シオは必死で何かを伝えようとしているシロンを見て、何とか言いたい事をくみ取ろうとするが、何を言っているか、さっぱり分からない。
「つか、今の時間にやってるのか?『ワニの穴』」
「ンガガ!」
「だから、分からんって!」
そんな会話を何度か繰り返した後、シオとシロンは『ワニの穴』に着いた。
「電気付いてるな」
ぎぃっとドアを開ける。
「!?」
「あ?」
開けた先にはいかつい顔をしたドラゴンがいた。
―炎の翼…。
「グリードー!?」
シオの言葉にいかつい顔をしたドラゴンは驚いたように目を丸くした。
「なんだ、お前。何で俺の名前を…」
「よぉ。やっぱここにいたな、グリードー」
―シロン、いつの間に…。
振り返るとそこにはドラゴンのシロンがいた。
天井が低いせいで頭が辛そうだ。
「シロンか。という事は…」
グリードーがギロリとシオを見下ろす。
シロンよりも目つきの悪い、威圧的な視線に息苦しさを覚えつつも、シオはまっすぐにグリードーを見上げた。
「こいつが新しい風のサーガか」
「まぁな」
「おっ!兄貴!!お久しぶりで!!!」
店の奥にいたダンディがシロンを見るなり、嬉しげに声を上げた。
「いつもの頼む」
「あいよ」
ダンディは手馴れた手つきで棚から酒の入ったボトルを取り出す。
「お前、なんて名前だ?」
「神威 シオだ」
「シオ、か。よろしくな」
グリードーはシオに向かって、笑ってみせた。
「お嬢さんは何か飲みかい?」
「あたし、未成年だから酒は飲めねぇよ」
「わかってるよ」