レジェンズ

□サーガの印
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次の日

ふぁっと大きなあくびをしながら、シオは高校に向かって歩いていた。

―レジェンズ、か…。

不意にシロンの事を思い出したシオがうーんと唸った。
正直、昨日の事は夢だったのではないかと朝起きた時に思った。
あまりにもメルヘンすぎる。
けれど、あれは間違いなく、昨日あった事で夢などではない。

「風のサーガって言われてもなぁ…」

何もかもがピンと来ない。

「つか、レジェンズだけじゃなく、サーガも捜さないといけないのか…」

課題は山積みだ。
ニューヨークに引っ越してきた途端にこんな事が起きるだなんて誰が想像出来ただろうか。

「学校には慣れたから、まぁいいけどさ」

などと一人で呟いていた、次の瞬間。
バシャっという音と共に水が頭から降ってきた。

「は?」

ポタポタと水滴が滴り落ちる。
状況が理解出来ないシオはその場に立ち尽くす。

「大丈夫かい?お嬢さん」

低い声がして、振り向くとそこにはなんとワニがいた。
なぜか服を着たワニはずぶぬれのシオを見て、申し訳なさそうにしている。
見れば、ワニの手には水の入ったバケツが握られていた。

―水まいてたのか。

いやに冷静な頭でシオは物事を判断していく。

「あんた、水まく時は気をつけろ」

―ワニに何言ってんだ、あたしは。

「すいませんでした」

ワニが深々と頭を下げる。

―学校、どうするかな…。

一回家に帰っていたら、間に合わない。
だが、この格好のまま、学校には行けない。
散々考え抜いた結果、シオは遅刻してでも一旦着替えに帰る事にした。

「ちょっと待ちな、お嬢さん」

「何だよ」

立ち去ろうとしたシオをワニが呼び止める。

「あんた、そのまんまだと風邪引いちまうぞ」

「だから、一旦家に…」

「俺の店に来てくれ。服乾かしてやる」

―今更だが、こいつ、レジェンズ?

四大レジェンズのレジェンズという感じではないが、話せるワニが自然界にいるとは思えない。

―四大レジェンズじゃないレジェンズも復活してんのな。

「お嬢さん、名前は?」

「神威 シオだ。あんたは?」

「俺はダンディだ。よろしくな、シオ」

ワニことダンディはにかっと鋭い歯をぎらつかせ、笑って見せた。
本人に悪気はないのだろうが、見ているこっちとしては、何故か複雑な心境になる。

―食われそう…。

「へっくしっ!」

「っと、立ち話してる場合じゃないな!ついて来な」

ダンディは立派なしっぽを翻し、力強く歩き出した。
鼻を啜りながら、ダンディについていくシオ。
少し歩いた先に『ワニの穴』と書かれた看板のある、一件の店を見つけた。

―こいつの店…?

レジェンズが店を経営して大丈夫なのかと疑問は多々あるが、今はほっておこう。
シオはダンディの後に続いて、店の中に入った。
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