カゲロウデイズ

□正体
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「テスト返すぞー。えーっと、数学だな」
「「「うぇえ〜…」」」

先生が中間テスト返却を発表すると共に、クラスの皆のため息が吐き出された。どこかしこに、出来た?だのヤバい!だのといった声が聞こえてくる。
 
「はいはい、うるさいぞ」
先生は苦笑いを繰り返しながら、生徒の名前を番号順に呼んでいく。
「如月」
名前を呼ばれたので、面倒くさいなとも思いながら解答用紙を受け取った。
「よくやったな。いつも通り、如月はクラス1位だ。」

うわ…

これもまたいつも通りのざわめきが背中越しに聞こえてくる。
やはりそれは、賞賛の声であって。嬉しいと思う気持ちはもちろんのことあるのだが、それ以上に、目立ちたくないという願望が上回る。
席に着くまでの間中ずっとオレに向けられる目。それにくすぐったいような、舌打ちをしたくなるような変な気持ちを抑えて歩く。
オレは解答用紙を乱暴にクリアファイルにぶち込んだ。後で見るものでもない。

「そういえばさー、シンタローPの新曲聴いた?」
「うん、聴いたよ〜。相変わらず良かったよねぇ」

どこかでそんな声が聞こえたような気がした。
それともうひとつ、女子たちの間から時折聞こえてくる、それにしては少し低めの声。

「鹿野君も歌ってたよね!新曲」
「ん?…あぁ、シンタローPのね。うん、歌ったよ〜。聴いてくれたの?ありがとう!」
ヘラリと笑ったソイツの顔を横目で見ながら、ふっと息をつく。
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