てきすと

□見えなくても
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君のことを、守りたいのです。好きでいたいのです。


「綺麗な瞳だな、相変わらず。」
「おんしのほうが、綺麗じゃよ」

みえないくせに何をいってやがる。
みえないくせに、何でそんな顔してんだ。
例え目が見えなくなっても、彼は俺に愛を囁く。
その碧眼に、今は何も映らない。
俺の顔でさえも。

前よりも下手くそになったキスが妙に目頭を熱くさせた。
「カッコ悪いキスですまんちや」
「本当だ」

「酷いにゃー」

だけど、そのぎこちないキスが愛情に溢れているのを俺は知っている。
こんな風に、盲目な彼は俺の顔が見えなくとも、抱え込めないくらいの愛情をくれる。

その両手で俺の唇を探して、それからゆっくりと近づく顔をギリギリまで見るのが好きだ。
伏せられた睫毛が、意外に長いことを知ったのはいつだったか。

「すきじゃー」
「しってる」

「目ぇが見えんくても、おんしの顔がみえなくても、」

守っていたい。
守られるのではなく、己よりも儚いあなたを、守っていたい。

たとえこの腕が、脚が、奪われたとしても

「ばーか」
「好きじゃあ」

「...っ、ほんとに、ばかだなぁ」

どうしてこんなに好きになってくれるんだ。
俺は、同じものを返せないのに、
この世界を壊そうとしている者が、ここまで純粋に好いてくれる彼を、

「おんしは、わしにずっっと愛されちょればええんじゃ」
「...たつま、」

たつま、たつま、

今度は、俺が守られたぶん。
お前を死ぬまで守ってやる。


刹那、影が重なった。

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