≦鬼徹書物・長編≧ そうだ、地獄に行こう!!
□【第五話】 同じ屋根の下A
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………また、無言が数秒間漂う。
寝てしまったのかと、目を瞑った鬼灯の耳に…。
「………私は……あの世に来てすぐに、天国に『保護』されていました。快く、という訳ではありませんでしたが……その中でも、私のことを親身になってくれる人もいたんです。…………でも、地獄に就職すれば嫌がおうにも、自分の死に関係した人たちと会わなくてはいけない………そのとき、自分がどうなってしまうか…怖いんですッ!」
その柊の声はうわずり、怒りや不安が混ざっていた。
「いや、そこは心の赴くままに、呵責しちゃってください。」
「…………………へっ?いいんですか?」
重い豪速球を、意図も簡単に打ち返すような鬼灯の返答。思わず、上半身だけ振り向く柊。
鬼灯は、柊が此方を向いていることに気づくも、背を向けたまま話す。
「悪因悪果 天網恢恢。亡者の前世の行いを裁判にて審議し、罪あらば、その分重い呵責を強いられるのは当たり前です。」
「でも、私の場合は公私混同になってしまいますッ。」
「私も大昔は『人の子』でした。ですが、日照りが続いたある日、村の中で私が『みなしご』という理由だけで選ばれ『いけにえ』にされました。」
「………あっ…。」
「同情など必要ありません。死後、体に鬼火が寄せ集まり、鬼として蘇ることができましたから。」
(……鬼灯と私の境遇って、似てるかも…。)