≦鬼徹書物・番外編≧ 地獄良いところ、一度はおいで!

□噂話
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―――…閻魔庁内。



とある諸事情で男装している補佐官見習いの柊は、大量の書類を両手に抱えて、小走りに廊下を歩いていた。

書類は柊の視野を狭めるほど高く積んだ状態で運んでいたので、廊下の突き当たりの曲がり角から人影が出てきたことに気が付くのに遅れた。

「わあぁッ!!」
  「おっと、危ないッ。」

「ぶつかるッ。」と思った柊は、バランスを崩して倒れそうになる。………がそれを、大きな両手が書類ごと柊を抱き締めるように包んだ。

「大丈夫?柊ちゃん…いや、『君』かぁ。」

その聞き覚えのある声に顔をあげた柊。目の前には、秦公王の第一補佐官の小野篁がヘラッと笑っていた。

「篁様っ!?すっ、すみません。私の前方不注意で、ぶつかってしまって〜……。」

恐縮と今の状態に、顔を赤くしながら柊はゴニョゴニョと謝る。

篁はパッと手を離すと、そのまま柊の持っている書類の上から3分の2を持ち上げた。

「えっ!あっ…。」

「運ぶの手伝うよー。」

「篁様にこんな雑用をしていただくなんて、そんな滅相もないですッ。」

慌てる柊を尻目に、「気にしなくてもいいよーぉ。」とハハハッと笑いながら歩き出す篁。
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