夢小説「400年の願い」

□10 初依頼
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「依頼主の住所も分かんないまま歩いていかないでよ」
 住所の記された紙を、ラクサスに無理やり押し付ける。
「そういいながら俺に押しつけんのもなんだと思うがな」
「だって私、ここら辺の土地勘ないし」
 もしここでラクサスを見失えば、私の迷子は確定だろう。
「しょうがねぇな、離れねぇでついてこいよ新人」
―― 一時間後 ―――
「ひぃっ、はぁあっ! も、もう歩けなっい!」
「はあ? まだ1時間も経ってねぇぞ」
「こ、こんなに遠いなら、列車で来れば、はぁ、良かったのに!!」
 私は森に挟まれた大きな道の中心で挫折中。
 ここに来るまで、山越え川越え知らない牧場越え……とにかく色々な場所を越えて、結果ここにいる。
「列車は嫌いなんだよ」
「嫌いってだけでよく人連れて歩けたね! 会って間もないけど、お前がどういう人間かっていうのがよく分かった!!」
 指を指してキレる。 この発言の90%は単なる疲労からきた逆ギレである。
 道に腕を組んで座り込み「もう歩きません」を決めかねると、目を合わせないようしかめっ面で黙りこむ。 いつもの調子でふてくされ、また自分を面倒くさい人間だと思い知ることになるのがオチだが。
「テメェはガキか」
「むしろババアだ、年寄りをいたわれ」
「どうみても俺より年下に見えるがな」
 そうだ、こいつとは私のことを一切知らなかった。
 ふふふ、この、人を思いやれない男を少し驚かせてやろう。
 棒になった足でよろよろ立ち上がり、腰に手をあて胸を張る。
 そして、言ってやった!!
「私、実は400年生きてるんです!」
「あっそ、冗談はよして行くぞ。 この道をたどればあと少しだ」
 …………この虚しさは、どこへ捨てればいいですか?
「本当に400年生きてるんだって、ねぇねぇ、信じてよ。 私、寂しくて死んでしまうじゃないの」
「400年も生きてんなら、寂しくて死ぬなんてことないと思うがな」
 思ったよりこいつ手強いぞ。 ふ、ふふふ、まあ後でこの屈辱をぶつけて、驚かせてやればいいこと。 慌てなくてもいずれうんと驚くことになる決まって、
「え、えええぇ……」
 私は絶句した。
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