夢小説「400年の願い」

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 フェアリーテイル、名前は一度聞いたことがある。
 マグノリアにギルドがあり、最強魔道士(問題児)が集まるなんかすごいギルドらしい。
 たしか、7年くらい前に主要メンバーが島もろとも消えたとかなんとか。
 ……あいつが言ってたのをちょろっと聞いたぐらいだけど。
「ミラ、様子はって――おおっ! 目ぇ覚めたか!」
「あっ、おはよう! 頭大丈夫?」
「ん? あいつやっと起きたのか。 三日ぶりだな!」
 ギルド内の視線が私に集中する。 雰囲気からして、私になにかするわけでもなさそう。 改めてほっとする。
 でも視線が恥ずかしかった。
 視線から逃れるように、カウンターであぐらをかき座っていたマスターであろう人物にお辞儀をする。
「今回、気を失ったところを助けていただきありがとうございました」
「わしは何もしとらんよ、礼を言うならそこにいるガキどもにいってやってくれ!」
 頭を上げて、振り向く。 さっき声をかけてくれた金髪美女と、桜色の髪をした男(+青い猫)、上半身裸野郎と赤い髪の鎧美女がそこにいた。
「……ありがとう」
 駄目だ、若い衆に慣れてない。 気恥ずかしさでつい目線が下に落ち、声が小さくなる。
「いいってもんよ!」
 桜色の髪をした男に背中を強く叩かれた。
「ぐはっ‼」
「ナツ! その子怪我人‼」
「そうだった!」
 「馬鹿じゃねーの」と、変態野郎がナツと言われた男へ呆れたように言うと、「脱いでる奴に言われたかねーよ」と、私が突っ込みたかった箇所を大声で指摘してくれた。 変態――本人は今さら気付いたようで、ぬをあ!? と体をのけぞらせ驚く。
「ごめんね、平気?」
「大丈夫、ちょっと骨二、三本折れただけだから」
「それ大事故よ‼」
 金髪美女のツッコミ反応がすばらしく早い。
 鎧の女性が私に近づき、微笑んで握手を求めるよう手を出した。
「私の名前はエルザ・スカーレットだ。 君は?」
「私は……ドゥーシャ・サクハ、初めまして」
 今、握手はしたくない。
 エルザと名乗ったその人はそんな私の思いを察してくれたのか、目を軽く瞬かせると手をひっこめた。
 その隣から、金髪美女が笑顔であいさつ。
「あたしルーシィー! んで、あなたを叩いたこいつがナツ」
「グレイだ、よろしくな」
「おいらハッピーだよ! 魚食べる?」
 皆私と同年代近くに見えているので、気軽に話しかけてくれる。
 それでも警戒を解くことが出来なかった。
「ごめんなさい、まだ気分が優れなくて……」
 額に手をやりアピールをする。 なるべく会話も避けたい。
「ならうちのギルド泊って行く?」
 男女(足す猫)に囲まれていた私にミラさんが助け舟を出してくれ、質問攻めにあう事からは逃れられた。
「いいんですか?」
「いいわよ、ギルドの皆頑丈だから、医務室いつも空いてるの。 どうせ数日使っても、誰も困ることはないわ」
 フェアリーテイル恐るべし。
「じゃあ……」
 ここなら良い隠れ蓑になるかも知れない。 あいつらもこの町までは追っかけてこないだろう、そんな安易な考えだった。
「じゃあ、数日間滞在させてもらってもいい……ですか? 掃除洗濯少しは出来るんで、あの、お願い、します」
 慣れない丁寧語をとぎれとぎれに使って頼む。
「滞在するくらいならうちのギルド入ればいいのに!」
 ナツが頭の後ろに腕を組み、笑う。
「お前魔道士だろ?あ、もしかしてもう別のギルドはいってんの?」
 冷や汗が一筋首に流れた。
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