夢小説 短編集

□GW小説 グレイ編
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 最近の日差しはナツの炎並に暑い。
 私はうちわを仰ぎ、ノースリーブ薄手の新しいワンピースを着て、ギルドに到着した。
 ギルド内にいる皆も、暑さにへたれてぐだぐだしたムードが立ち込めている。
 グレイが水を飲んでいるのを発見し、その隣に座ると手を握った。
 いきなりのことに驚くグレイ。
「おっ、おい、急にどうしたんだ?」
「暑いから冷えるかと思って」
 氷魔道士のグレイの手は案の定ひんやりしている。 単に冷たいコップを握っていたからかもしれない。
 私の火照った体温は若干だが和らいだ。
「ひんやりして気持ちいい」
「そうか?」

 俺はどぎまぎしながら返す。
 ドゥーシャが自分からくっついてくると思いもしなかった。
 すぐ近く、いや、ゼロ距離にいるドゥーシャの柔らかな髪が首筋をくすぐる。
 俺の指に絡められた白く綺麗なドゥーシャの指と、くっつく腕の体温のせいか、俺は僅かに心臓をどきどきさせていた。
 身長と性格のせいで俺より年下に見えるけど、こうして間近で見ると、それなりに、大人の女性といった凛とした顔立ちをしていなくも見えなくはない。
 ミラちゃんがドゥーシャにフルーツジュースを注いできてくれ、俺の手を離すと両手で冷えたグラスを握った。
「冷たい……ん、おいしい。 グレイもいる?」
「いらねーよ」
 苦笑して手をひらひらさせる。
 ドゥーシャはグラスの中のジュースを一気に飲み干し、机に伏せこむ。
 暑くて依頼に行く気もないらしい。
「グレイ、私を冷やして」
「俺の魔法は冷却魔法かよ。 そんなことしたら血液凍って死ぬぜ?」
「じゃあ死にたい、暑過ぎて生きてらんない」
「軽い命だな」
 400年も生きておいていまさら死にたいなんざ、肥えてきた命を呆気なく終わらせるつもりかよ。
 冗談と分かりつつも頭の隅ではそんな事を考えた。
「じゃあいい」
 ドゥーシャは机から顔を上げ、うちわで自身を仰いだ。
 涼しい風が俺の方にも吹いてきて、ちょっと得。
「今日は皆と依頼行かなかったの?」
 ドゥーシャはギルドの中を見渡す。 ナツやルーシィー達は今さっき依頼に行って、ここにはいなかった。
「ちょっと用事が重なってな、それにどうせ連れてかれてもお前みたいに冷却代わりにされてただろうし――っておい」
 人が話しているというのに、ドゥーシャは誰かを見つけて立ち上がり向かっていく。
 歩いて行った方を見ると、ウェンディとシャルルがいた。
 手を軽く上げて挨拶をすると、さっそくウェンディの手を取る。
 何か一言二言言うと、ウェンディは笑顔で頷き、魔法をかけた。 風がドゥーシャの髪をなびかせる。
「あいつ、人に魔法ねだり過ぎだろ……」
「ドゥーシャはマイペースだからね、しょうがないわよ」
 空になったグラスを回収するミラちゃんに聞こえてしまったらしい。
「あのマイペースに巻き込まれんのは勘弁だな」
 まだ手と腕に残るドゥーシャの温もりが、高まりの治まりつつある鼓動に対し、そんな発言を口にした。
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