夢小説「400年の願い」

□18 魔力は無限、体力は有限
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 私は青い空を眺め、白く漂う雲を目で追った。
 ギルドの中は暑いので、最近はこうやってぼーっと空を眺めている。
 実は、マスターにしばらく依頼へ行くのは駄目だと、謹慎処分を食らわされてしまったのだ。
 列車を倒したせいもあるが、何より、私が誰か、もしくはどこかの組織に狙われているから、という理由の方が強いらしい。
 それが誰なのか頭の中で考えて、いつもある人物にたどり着くのだが、はっきり顔を見てないし、印象に薄い。
 ――レビィになりすまして私を拉致ったり、私が潜入調査をしたときギルドで金と取引しに来た男。
 思い出そうとすればするほど腹が立つ。
 ドランバルトを傷つけたし、列車の時はルーシィー達に危害を加えようとしていた。
 この胸糞悪さを吐きだそうと空に叫ぶと、ギルドに入りかけた数人が一斉にこちらを凝視した。
「うるせぇぞ、謹慎処分でイラついてんのか」
「ラクサスに関係ない、もう考えれば考えるほどムカついてきて……あああっ!! ほんっと腹立つ!!!!」
 今にでもそいつを探しだしてとっ捕まえたい衝動が、マスターに出された謹慎処分に抑えられ、もどかしかった。
「女なんだから、もっとおしとやかに出来ないもんかねぇ」
 ラクサスに茶化され、むすっと顎に手を置くと前のめりに座った。
 ラクサスは意外そうに声を出した。
「なんだよ、今日はいつもに増して反応が悪いな」
「わたしだって、そういう時ぐらいある」
 適当に返して、これ以上口を出されないようにと口を閉ざした途端、みっともなく私の腹の音が鳴った。
「……なんか奢って」
「なんで俺が奢らなきゃなんねぇんだよ」
「そこにいたから」
「お前は腹が空いたらそこに居た奴の財布を空にするつもりか」
 グダグダと言い合ったが、なんとか交渉に応じてくれた。
 昼食をギルド内でとると、ラクサスの町での買い物に付き合ってあげた。
 もちろん、ラクサスの強制に近い。
「ラクサスが買い物するなんて、珍しくない?」
 一緒に遠出の依頼へ行くときだけ、野宿用の食べ物を買って持って行くのは知っていたが、プライベートでの買い物は初めて見た気がする。
「なんだ、悪いか」
「全然、むしろ興味ある。 ラクサスの弱みでも握れるなら」
「俺に殺されたいのか?」
 図体のデカイラクサスが町中を歩く姿は、いつ見ても、ライオンがシマウマの間を何も気にせず歩いているようなインパクトがあった。
「何買うの?」
「生活用品に決まってんだろ」
 うわぁ、意外にきっちりしてたぁ。
 ラクサスは食料などを買い、私は特に荷物を持たせられる訳でもなく、ただ付いて回っていた。
「――暇なんだけど」
「お前に荷物持たせたらすぐ体力なくなって、悲鳴上げるだろ」
「ごもっとも」
 じゃあなんで私を買い物に誘ったと問いたかったが、それを言ってギルドに戻されるとまた暇になるので、なんとか口の中でとどめた。
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