夢小説「400年の願い」

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「ドゥーシャ、今暇?」
 ギルドの長椅子に寝転がっていたせいで、逆さまにルーシィーの顔が覗く。 手には依頼の紙が握られていた。
「暇を持て余してたところ」
 起き上り、縮んでいた筋肉を伸ばすため大きく背延びをする。 ルーシィーから依頼の紙を受け取った。
 私は最近ある依頼で大金を手に入れた。 五カ月先の家賃も気にせず過ごせていたため、大いに暇だった。 魔力を使うのは、せいぜい週に一度の魔力発散ぐらいだ。 これはしないと気分が悪くなる。
「なるほど、荷物運び10万ジュエル……他に誰誘ってるの?」
「ナツにグレイ、ウェンディ。 エルザは他の依頼行っちゃったし〜、それに――」
「私が今大金手に入れて暇にしてるから、依頼金分けなくて済むしーってことでしょ」
「そうしてくれると助かるわ!」
 ルーシィーの方はいつも家賃をぎりぎりに払う。 この依頼、グレイとナツがジュエルを分けて持って行きそうだが、ウェンディは優しくて、しかも今、私同様懐に余裕があるので、ルーシィーのためにお金をもらわないだろう。 あくまで予測だけど。
「いいよ、行こう」
「やった! ありがとう、依頼品が大荷物で手を借りたかった所なのよ!」
 手を叩き、飛び跳ね喜んだ。
 喜び過ぎていると思ったが、荷物を見た途端、喜ぶのも無理はないと悟った。
「うわあ……え、な……」
 ギルドの外に、背丈半分ほど大きさがある、麻布に覆われたものが五つ、形からして銅像だろう。
「列車三つ乗り継いで運ばなきゃいけないの。 歩きも結構入るけどね」
 荷物の上に手を置き、面倒そうに目を細めて苦笑いするルーシィー。
 腕試しで銅像を持ち上げようとしたところ、あまりの重さに眉をしかめた。
「……ルーシィー、やっぱ私断――」
「二言はなしね!」
 ……鬼畜っ!
 私の体力が普通より低いことを知っているはずだ、それだけ断ってほしくないのか。 きっと他の皆も誘ったけど、断られたんだろうなぁ。
 と、頭の片隅でルーシィーの家賃について理解しながらも、忌々しさで暗いオーラを放ち、ル―シィをガンつけてみた。 笑って誤魔化される。
「あ、ドゥーシャさんも一緒なんですね!」
 ギルドから、可愛らしい少女ウェンディがシャルルと共に出てきた。
「ウェンディはどうすんの? 私より力無さそうだけど」
 もしウェンディがこの荷物を見て嫌だとでも言ってくれれば、それに便乗して私も断ることが出来るかも知れない。
 しかし、ル―シィは元気よく「大丈夫よ!」と、拳を顔の横で作り、対策があるとでも言いたげだ。
「ウェンディはナツの体力を回復させる為に付き合ってもらうだけだから!」
「ああそう」
 体力要因にへたれられたら困るしね……私もウェンディに個々の回復魔法教わろうかな。
 体力と魔力の回復、傷や病の緩和をする魔法は私の方が若干上だが、乗り物酔いなど個別に治療する魔法に関しては、全くだった。
 そう考え始めたとき、ギルドから体力要因の二人とおまけ一匹が出てきた。
「おう? なんだ、ドゥーシャも一緒に来んのか」
「ギルド一、体力の低いドゥーシャが?」
「ギルド一じゃないし、マグノリア一だし」
「そこ自慢げに言うとこか」
 グレイが言うことは正しい。 私は多分(絶対)ギルド一体力の低い魔道士だろう。
 この前依頼で港のモンスター退治をするはずだったのに、港に行く途中でへばりついたという魔道士はこの私だ(徒歩約十キロ中、三キロの時点でアウト)。
 前より体力下がった気がする、いや、ベルが死んで野良やってた頃はよく歩いてたけど、今は全然歩いてないから、元に戻っているというのが正しいか。
 ラクサスと依頼に行くこと(強制的に連れてかれること)もしばしばあるが、基本徒歩、――いや、毎回徒歩なので、私の体力が無いばかりに、野宿もそう少なくない。
「運べんのか? 無理だったら持ってやってもいいんだけど……」
「持てるから! ほ、ほら、銅像持ち上げてるし」
「ドゥーシャ、銅像には手ついてるけど地面に足ついてないわよ!」
 バランスを崩しかけて、片足が中に浮いた。
 銅像をしっかりと抱きしめ、地面に腰の当たる反動を受け止めようと目をつぶる。
 ドスンと腰に衝撃が伝わり、重さが腹に加わった。
 目を開けると、皆が心配そうに私を覗いている。
「大丈夫?」
「うん、歩ける」
 精一杯の強気とプライドが、自分の身を滅ぼすことになるのは言うまでもない。
 そして、今の衝撃で体力の8割が持っていかれた。
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