夢小説「400年の願い」
□16 雨の降る午後
1ページ/3ページ
暑くて死にそうな季節の昼。 豪雨は突然やってきた。
「あ、雨だ」
フェアリーテイルの寮に帰ろうと評議員専用の寮を出たとき、ぽつりと手の甲に落ちた小さい雨粒に気が付き、空を見る。
視界のどこまでもが分厚い灰色に染まり、私は引き返した。
「なんだドゥーシャか、どうした。 帰るんじゃなかったのか?」
ドランバルトが棚の前で本を手に取っている。
私は無言のまま荷物をソファに置く、すると、外の雨が激しく降り始めた。
音に驚き体が跳ねる。 この間、記憶で聞いた、滝の中へ落ちるあの音に似ていたからだ。
今までは忘れていてなんとなく不快だった音が、今は何故不快なのかを知っているからこそ、恐怖が増して、そして存在をはっきりと確認することが出来た。
言葉が上手くまとまらないが、とりあえずやりたいことは、一つ。
「……なんだ」
「恐さを緩和してる」
ドランバルトの腕にしがみつき、人の温もりの大切さを改めて実感する。
雨の音とともに、窓の外には水が大量に流れ、木の枝が風で大きく揺れる。
雨の様子をしがみついたままじっと見つめている私に、ドランバルトが困ったような顔をした。
「ちょっと、密着しすぎじゃねぇの?」
「駄目?」
「駄目以前に、恥じらいってもんがな――」
何かを言いかけてやめた。