夢小説「400年の願い」
□4 秘密の共有
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「――神様の贈り物ってことになってるけど、単に、生まれつき魔力に底辺と上限がない体質なんだよね」
「さらっと言ってるけど、それって普通ありえないわよね!?」
「……え?」
逆に不思議がられた!?
ドゥーシャは落ち着きをはらったまま、あたしたちに話してくれた。
今聞き出した情報を整理すれば、彼女は400年生きていて、生まれつき魔力に困ったことがないってこと! そんなのってありえる訳!?
でも本人はそういうし、それに、さっき肩を叩かれたときの魔力の高さは異常だった。
だけど、オーラ的な――なんていうんだろ、近くにいても強い魔力を感じないのよね。
ナツやグレイ達に400年前がどんな感じの場所だったか、食べ物は何があったのかなどを問いただされて困っているドゥーシャに尋ねてみた。
「ね、さっき魔力を抑えるとかいう魔法陣の話、したわよね?」
「うん」
「その魔法陣どうやって描いてるの?」
魔力を抑える魔法陣なんて聞いたことがない。
ちょっとした疑問をぶつけただけだった。 それだけだったのに、ドゥーシャはわずかに目を見開くと、深くまぶた閉じる動作を一度行い、口の端をきゅっと結んで神妙な顔をした。
「……言わないと、駄目だったね」
何か重要なことなのだろう。 彼女の表情が鋭くなったのを察して、皆は黙った。
ドゥーシャはどこか遠く、私たちには見えていない一点を見つめる。
それから決心したように重たい口を開いた。
「背中に魔法陣があるから、私はなんとかここにいる。 それが今、消えかかってる」
それだけを言うと、少ししてから言いづらそうに口をあわあわとさせ、目を泳がせながらあたしたちを見る。
エルザはそんな態度にしびれを切らし、強い口調でドゥーシャに問いかけた。
「どうした?」
「あっのぅ……これ言っても、評議院につき返さないって約束してくれる?」
「内容によるな」
エルザの一言でドゥーシャは難しそうに顔を歪め、もう何も話さないのかと思ったそのとき。
「魔力を抑えるこの魔法陣、実は、評議院が年に一度描いてくれる、特殊なやつなんだ」
諦めたように再び話し始めた。 そこで、疑問が増える。
「え? 待ってよ、っていうことは評議院とは知り合いなの?」
「うーん、おおざっぱにいえばそんなとこ」
「はあ? 知り合いならなんで追われてんだ?」
「……言われたの。 ベル――恩師に、評議院の奴らに騙されちゃいけないって」
ベルという誰かの名前を口にしたドゥーシャの顔が、一瞬だけなつかしみを感じたように優しくなった。