夢小説「魔導士嫌いの魔導士」

□8 島に漂流! はぐれた魔導士御一行!!
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「あ、薬切れた……」
 私は誰もいない医務室で呟く。
 あと一粒で終わりだと分かっていたのに、ミラさんに頼むの忘れていた。
 最後の一粒を口に放り込み、重大問題を軽く考える。
 そもそも、この薬どうやって作ってるんだろう。 たまに来るミラさんに薬を頼んではいるけど、最近じゃ数があまりないって言ってたしなぁ……私が飲んでるこの薬って、結構高価なのかな。 後で請求書でも来たらどうしよう。
 顔の筋肉がひきつる事を考えながら、気にしないようにそそくさと日記をつけ、布団を被った。 明日、薬を持ったミラさんが来てくれますように……

『お母さん、お母さん、私も料理手伝うよ』
『お父さん、お父さん、私も仕事手伝うよ』
『ねぇ、聞いてる? 聞いてる? ねぇねぇ、聞いてる? 手伝わせてよ』
『お母さん、お父さん、聞いてる? ねぇ――』
 私は両親の腕を強く引っ張った。
 にこにこする両親の腕が、もげた。
「きゃあああああああ!!!?」
 布団をめくり、勢いよく起き上ったせいで目覚めた。
 朝から心臓に悪い……カーテンを開くため、バクバクした鼓動のまま床に足をつけ立ち上がる。
 眠気もあってか、目眩と立ち眩みでふらふら窓に歩む。 窓枠に手を置いて、カーテンと窓を乱雑に開いた。 まだ暗いけれど、鳥の鳴き声、朝日が昇ってくることで、朝が来ているとわかる。
 物騒な夢を見たあとなので、朝の清々しい空気が心を清めてくれている気がした。 大きく息を吸い込み、吐く。
 一秒後、突然の頭痛に襲われた。
「いったい……いー……」
 意識がぶっ飛びそうな激痛。 息がつまり、吐き気さえ襲う。
 棚の上に置いていた十字架と緑の鉱石を手に、床へ座り込み、ベッドへ頭を埋もれる。 ぎゅっと十字架を握って、頭痛が少しでも和らぐように祈った。 力が出ず、頭の中で「痛い」と「納まれ」の言葉だけが巡回する。
 しかし、それだけでは一向に収まるはずもなく、悪戯に時間だけが過ぎようとしていた。
 こうなったら、嫌だけど誰か魔導士が来てくれることを――
 ガチャッと扉の取っ手が傾いた。 誰かがこの部屋に来てくれたようだ。 小さな音だったが、私には、大きな救いの音に聞こえた。
 そしてすぐ、ミラさんが来てくれたと勝手な思い違いをした。
「なんで俺が依頼帰宅すぐ、あんなガキに朝食持って行かなくちゃならねぇんだよ……あ? 何してんだ」
 まさかのラクサスご入場。
 いや、今は選り好みしている場合じゃない!
「ラクサスさんっ、こっちに、早く……」
 私が捻りだすように言葉を出すと、ラクサスは不振気に眉をしかめ、食事を近くの机に置いてから、私を立たせる為背中に腕を回した。
「どうした、さっきの悲鳴はこけたからか?」
「こけてないけど、非常に助かりました」
 ラクサスの腕を握って立ち上がる。 先程の痛みが嘘の様に引いていた。
「実は、頭痛を止める薬が切れまして、誰かといないと頭が割れて死にそうで死にそうで」
 魔導士と一緒にいる行為自体いけすかないが、自分の身体のためだ。 文句は言えない。
「薬はミラからもらってるよな、行くぞ」
「今、ギルド誰もいないよね……?」
「いねぇよ。 つーか、いい加減人間慣れしたらどうだ」
 私は魔導士が嫌なだけで、人間嫌いなわけじゃないんだけど……私は、周りから人間嫌いだと思われているようです。
 まだ気分が優れないので、朝食は食べずに医務室を出る。 ミラさんのいるカウンターに着くまで、ずっとラクサスにしがみついていた。 お化け屋敷じゃないけど、薄暗いし、お化け屋敷を連想させる。
「あら? リューがここにくるなんて珍しいわね」
 お皿を磨いていたミラさんが、私を見て意外そうに言う。 それから、私とラクサスがいる状況を見て、すぐに理解してくれた。
「もしかして薬、切れちゃった?」
 私は頷く。
 側にいたマスターが顎に手を置き、目を瞑って唸った。
「うーん、今、ポーリュシカのところへ行っても、材料がないから作ってもらえんじゃろうしのぅ。 どうしたもんか……」
 やっぱり薬の材料は、かなり希少なものだったらしい。
「モンスターを狩ってくれば材料は揃うんだけど、あなた達、行ってくる?」
 ミラさんが笑顔で私達に告げた。
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