Young Justice

□いつか分かる事
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俺は分かっていた筈だ。
こんな片想い、報われやしないって。
なのに期待していた自分が居た。
そしてそれが実現した時もあった。
ほんの僅かな時間だったけれど。


大人になって気付く事は、沢山あると言うのは、本当の事だった。


アルテミスとウォーリーが付き合い出して、もう半年にもなる。俺はそんな二人をただ、見守る事しか出来なかった。
俺のウォーリーを奪ったアルテミスが、許せなかった。けれどそれよりも許せなかったのが、ウォーリー。お前だって、アルテミスの事、嫌ってたじゃないか。弓使いは、スピーディだけで良いって。なのに、いつの間にか、お前は……。
俺の親友は、とても遠い所に行ってしまった。その事が、俺を強く縛り付けていた。

この場所はとても息苦しくて。
胸が苦しくて。
何もかもが嫌になる場所で。
けれど、逃げる事は許されない。何故なら俺は……リーダーだからだ。俺が居ないと、チームが成り立たない。司令塔が居ないと、一番この状況を理解している者がリーダーじゃないと。

だがこの事を、スーパーボーイには見透かされていた。彼の心の成長は、いつの間にか俺を上回っていた。

だから呼び出された。


真夜中。皆が寝ている時間帯。俺はスーパーボーイの部屋に向かった。
そして入ると、スーパーボーイはソファーに座っていた。
「ミッションに支障を来たしてはいないが……ナイトウィング。大丈夫か?」
「………俺の事はほっといてくれ」
「ほっとける状況じゃないだろう?!何故俺を頼ってくれない!」
立ち上がり、壁をだんっと叩くスーパーボーイ。おいおい、壁を壊さないでくれよ。
「俺じゃ駄目なのか?なぁ、ディック。……俺はいつだってお前に笑っていて欲しい。だから」
「……親友に裏切られた訳じゃないけど、この気持ちは、どうしたら良いんだ」
「ディック……」
「俺はウォーリーの事が好きだった。けれどそれをアルテミスに奪われた。俺の方が、ウォーリーの全てを知っていたのに。それでも、奪われた。何故、俺じゃないんだ。俺が男だからか?………」
俺はそのまま、ソファーに座った。
「……けど、二人を殺したいとか思った事は一度もない。ただそう……どうしたら良いか、分からないんだ」
「……俺が居る」
俺の隣に座るスーパーボーイ。そして、俺の手をぎゅっと握った。
「俺はディックや他の皆に助けられて、月や太陽、空気や人々を、本物を見る事が出来た。本当に感謝している。そしてそれと共に、俺はディック。お前の事がずっと好きだった。俺に色々教えてくれて、与えてくれるお前の事が」
「……けど君はメーガンと付き合っていたじゃないか」
「経験、だ。そうキッドフラッシュが言っていた」
「お前……」
「ああ。俺はキッドフラッシュに、俺がディックの事を好きだと話した。そうしたらまずは女で経験を積めって言われた。メーガンも俺の事を好きだった。だから、良い経験になったと思っている。それに、女って生き物がどんなのかもしれたしな」
「………」
「そして俺は気付いた。お前は……お前の心は、女よりも脆いと」
その一言が、胸にグサッと突き刺さった気がした。
「……ディック。俺が居る。だから、また前に見たいに笑ってくれ。俺は昔のお前が一番大好きだった。リーダーには適していなかったけれど、自由なお前が好きだった。……けど今のお前は、何かに縛られて、それをみんなにばれない様に頑張ってるようにしか見えない。笑顔が見えないんだ」
スーパーボーイが言っている事は適切で。確かに俺はここ最近、笑った事が無かった。いくら重要なポジションに居るとはいえ、笑う事は出来た筈なのに。それなのに、何も出来ていなかった。
「………俺よりも成長しやがって。何か、悔しいよ」
「……けど俺は、俺の姿はまだ……」
「心は確実に成長している。それは分かる。………ごめん」
俺はマスクを取ると、泣き始めた。そしてスーパーボーイに抱き着いた。
「好きなだけ泣けよ。溜め込んでた分、全部」
そう言ってスーパーボーイは俺の頭を優しく撫でてくれた。

それがとても胸に突き刺さったのと同時に、安心感が襲って来た。

俺の初恋は報われない。そしてそれが己を縛っているのなら、断ち切らないと駄目だ。
俺も前へ進まないと。




「(……スーパーボーイの部屋から、凄い音が聞こえたと思ったら。……ねぇキッド、あなたは、あなたの親友がこんなにも傷付いているの、気付いてる?……私も薄々感じてはいたけれど。今のナイトウィングには、スーパーボーイが必要なのね。私には新しい彼が居るし、スーパーボーイが優しいのは知っているから、任せたわよ。私には、何も出来ないもの)」















END

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