Young Justice

□初めての事
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外の世界は俺には広すぎて。何をどうしたら良いか、全く分からなかった。スーパーマンに会っても、彼は俺を避けた。当然と言えば当然だろう。自分の知らない間に、クローンを作られているなんて、誰にも想像出来ない。けど俺はここにいて、俺は実在する。今まで兵器として、人として扱われて来なかった。けれどそこに、ロビンやキッドフラッシュ、アクアラッドが、俺に光を見せてくれた。その瞬間から、世界が開けたと思っていた。けれどその考えは甘かった。俺は"本当"の空だの太陽だの、何も知らなかった。だからそれらを見たりした時は、世界が輝いて見えた。大体一緒にいてくれたのはロビンだった。活発な彼は、俺をあらゆる場所へと連れて行ってくれた。その時からだろう。ロビンに惹かれて行った。俺の知らない事ばかりを知っていて。物知りなのは分かっていたがここまでとは、思ってもいなかった。
「ねぇ、明日はさとっておきの場所に連れて行きたいんだ」
「とっておきの場所?」
「ああ。だから……キッドやアクアラッドにも内緒ね?」
とっておきの場所とは、一体どんな所だろう。俺は疑いながらも、明日を待った。
が、その日はミッションの招集を受けてしまい、その場所には行けなかった。だがロビンは諦めずに、ミッションが終わった後に、俺を連れ出した。
「すぐ戻るから」
何故俺と二人で出掛ける事に、そこまで心配をするのだろうか、キッドフラッシュは。彼は人一倍ロビンを心配して。本当にすぐだろうな?などと、何度も聞き返していた。
「だからすぐだって!10分くらいで終わるからさ」
何とかキッドフラッシュをなだめ、俺はロビンに連れられるまま、マウント・ジャスティスを出た。



そして、そこから少し歩いて。そこは崖だった。危ないんじゃないかと思ったが、彼はすたっとその崖の上に立っていた。
「さ、早くおいでよ」
俺は何とかそこまで辿り着くと、言葉を失った。
「どう?これが、夕陽と海」
「………綺麗だ。とても……」
言葉を失うとは、まさにこの時だろう。とてもそれは美しかった。ロビンは俺の為に、わざわざここに来てくれた。ミッション終わりで疲れているのにも関わらずに。ってそれは俺もか。けれど疲れが飛ぶぐらいに、その夕陽はとても綺麗だ。
「君にどうしても見せたかったんだ!とっても綺麗だしね」
「ロビン………」
その時だ。ロビンはマスクを外した。いつも素顔を絶対見せないロビンが、俺の前で見せてくれた。
「………ロビン、お前……」
「……ほら、信頼関係って大切じゃん?特に君には。だから……今更かもしれないけど」
それでも良い。俺は、ロビンから取ってくれた事がとても嬉しかった。俺はつい、ロビンを引き寄せ、抱き締めてしまった。
「っ!?」
俺は慌てて離れたが、ロビンの思考回路は停止してしまったようで。青い瞳が、俺を見つめていた。
「………えっと、どうかした?」
「……すまん。嬉しくて……」
それ以上言葉が出て来なかったが、ロビンは俺の肩を叩いて来た。
「うん、嬉しかったんなら、良かった。見せた甲斐があったよ」
にこっと笑うロビン。あ、駄目だロビン。そんな顔をしたら、また抱き締めたくなる。俺はその衝動を抑えるので、必死だった。それに、この感情は一体何なんだろう。言葉では言い表せないこの感情に、俺は戸惑っていた。
「そろそろ帰ろうか?キッドが煩いしね」
「あ、あぁ………」
ロビンのその一言のお陰で、何とかその衝動を抑えられたが。帰る理由が嫌だった。だが仕方ないか。俺はまだ新参者で、何も知らないんだから。


マウント・ジャスティスに戻るとキッドフラッシュに胸倉を掴まれた。
「何だ」
「お前、何でロビンを連れ出してんだよ」
「………何だって良いだろ」
お前に関係ないと言って、俺はその手を振り払った。
「ロビン!何もされてないか!?」
「えっ……大丈夫だよ」
俺はそこに居たくないから、逃げるように立ち去った。

苛々するとは、この事だろう。何故俺はロビンと一緒に居る事さえ許されない。やっと自由になれて、色々見て知って学んで。何も縛られなくなったのに、何故。だがふと思い出した。ロビンとキッドフラッシュはずっと一緒に居る親友だ、とアクアラッドから聞いていた。ならば仕方ないのか。いやだが、俺にもロビンの傍に居る権利はあると思う。部屋にそんな風に考えながら歩いていたら、メーガンと鉢合わせした。
「あら、やっと帰って来たのね」
「………相談がある」
俺にはどうして良いか分からない。アクアラッドにも聞くつもりだが、取り敢えず先に、メーガンに聞いてみよう。俺は彼女を部屋に呼んだ。


「………うーん。難しいわね………。キッドフラッシュは多分、ロビンの事が好きね」
「好き………とは、具体的にどう言う事だ?」
「えっ?……あぁ、そうね。………その人を想ったら、ここの辺りが少し苦しくなったり、嬉しくなったり。………ずっと一緒に居たいとか、そう言う感情が出て来る事、かな」
言葉の説明は難しいと言われてしまったが、俺はそれで分かった。ならば俺のこの感情は、ロビンの事が好きだと言う事か。だが好きになっても、ロビンの一番にはなれない。
「……俺がロビンの事を好きだと言う事は分かったが、どうしたらキッドフラッシュからロビンを奪う事が出来る?」
「そうねぇ………。………キッドフラッシュはさ、ロビンの親友じゃない?つまり長い月日を共にして来たと言う事。だからね、スーパーボーイがロビンと過ごす時間を沢山増やして、キッドフラッシュを上回るぐらいになって、ロビンを誰にも負けないぐらい知ってあげたら、良いんじゃないかな」
メーガンのアドバイスは的確で。確かに今の俺は、ロビンの何も知らない。素顔をやっと見れた所で。それに、あまり一緒に過ごしていない。なるほど。そう言う事か。
「ありがとう。これで……目標が出来た」
「それは良かったわ。私、あなたの恋を応援してるわね!」
「恋?」
「その、好きになった事をね、恋したとかって言うのよ」
ふむ、なるほど。俺はまだまだ学ぶべき事が多そうだ。メーガンはクッキーを作るからと、部屋を出て行った。
悩みは解決した。後は……一緒に居る時間を増やさなきゃな。







END

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