Young Justice

□困難
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あの中で一番傷付いたのは、ナイトウィングだろう。一番の親友を失ったんだから。だから彼は、暫く休みをくれと言っていた。正直、俺は彼を一人にさせたくはなかった。メーガンは、ナイトウィングの気持ちを分かってあげてと言って来たが、ならどうしたら良い。どうしたら、彼は戻って来る。一緒に悪党退治が出来ないとか、悲し過ぎる。ディック………。なぁ、俺は一体何をしたら良い?何をしたら、お前は喜んでくれる?俺は周りには気付かれないように、悩んでいた。勿論一番悩んでいるのは、ナイトウィングだ。そんな事は分かっている。けれど、俺だってナイトウィングの事で悩んでいるんだ。だって、俺はあんたの事が好きだから。


メーガンが俺の事をまた好きだと言って来た事で、俺は更なる困難へと直面していた。彼女を傷付けたくない。けど、ナイトウィングの……ディックの事を諦めきれない。俺を救い出し、色々教えてくれた彼の事を、ただ何とも思わなかった訳ではない。いつも助けてばかりで、そんな彼が、俺にはとても格好良く見えた。俺の知らない世界を知ってる彼に、俺は憧れた。けどその憧れが今では恋に変わっていて。誰にも相談出来ないまま、キッドフラッシュも逝ってしまい、また仲間を失った。そんな状況の中で、ディックに素直に俺の気持ちを伝えたとしても、無駄だろう。だからとにかく今は待つしかないのか。

俺の気持ちを感じ取ったメーガンは、俺を呼び出した。
「………ごめんなさい。私、あなたの気持ちも知らなで、勝手に………」
「いや、君は悪くない。……言わなかった俺が悪いんだ」
けれど言った所で、と言う気持ちもあった。相手はメーガンだ。傷付けない方法なんて、思い付かない。
「……ナイトウィングを想うのなら、待ってあげて」
「…………あぁ」
俺だって本当は待ちたい。けれど、そんな余裕が今の俺にはない。だから、メーガンにはそう言ったが俺はナイトウィングの所へと、向かってしまった。

情報によると、彼はレッドアローと共にマンションの一室に居るとか。何故レッドアローと一緒については、言いたくない。事前にそちらに行くと連絡を入れた所、来てもいいと言ってくれた。俺はナイトウィングが居るマンションへと向かった。
チャイムを鳴らし、出て来たナイトウィングに俺は抱き着いた。
「おっと……」
「すまない」
「君も不思議だね、抱き着きながら謝るなんて」
「………こんな時に来て、すまない。けど、お前の顔が見たかったんだ」
「……スーパーボーイ……」
俺はディックから離れると、彼は俺を中へと招き入れてくれた。

運がいいのか、今はレッドアローは居ないと言う。仕事だと言って、行ってしまったようだ。
「そこにでも座って」
「あ、ああ」
ソファーに座り、俺は部屋を少し見回して見た。あまり物が無い、ナイトウィングの部屋……。と言ってもレッドアローと一緒なら二人の部屋か。ナイトウィングは珈琲を淹れくれて、俺にくれた。
「ありがとう」
「ああ。……それで、どうしたんだい?」
「…………あんたに、チームを抜けて欲しくなかった」
「何言ってんだ。チームを抜けた訳じゃない。今は………休暇だよ」
「それでも俺は……あんたの傍に………」
俺がそう言いかけた時、チャイムが鳴り響いた。きっとレッドアローが帰って来たんだろう。俺は知らぬうちに舌打ちをしていた。
「ごめん、ちょっと待ってて」
「ああ……」
俺の気持ちを伝えられないまま、ディックは玄関の方に行ってしまった。
「………ブルース。何しに来たんだよ」
「スーパーボーイが此処に居ると聞いて、連れ戻しに来たんだ。ミッションだ」
「…………」
俺はその話を、リビングで聞いていた。聞こえない距離じゃないから、聞こえてしまった。くそっ。
「スーパーボーイ、バットマンが……」
「分かっている。………日を改めて、また来る」
「あ、あぁ………」
俺はそれだけ言い残すと、玄関のドアを閉めた。ウォッチタワーの方に向かおうとしたら、仕事終わりのレッドアローと偶然出会ってしまった。
「珍しい組み合わせだな。ナイトウィングに、何か用でもあったのか?」
「………そんな所だ」
俺は足早にこの男の前から過ぎ去った。傍に居ると、色々言われてしまう。


ウォッチタワーに戻るなり、俺はアクアラッドに殴られた。
「殴られた理由は、分かるな?」
「…………」
「全くお前は……。メーガンに嘘を言ってもらうように何て、どうしたんだ」
「………何だって良いだろ」
この気持ちは、誰にも分かって欲しくない。分かってしまったメーガンには仕方が無いけれど、誰にも分かってもらいたくない。これは俺の問題だ。
「良いか、もう勝手に何処かに行くな。お前は、俺達のチーム何だから」
「…………あぁ、分かってる」
俺は立ち上がり、その場を離れようとした。が、メーガンに止められた。
「………コナー。これから任務なの。一緒に行きましょう」
「……………ぁぁ」
正直、行きたくはなかった。こんな気持ちのまま、任務に集中出来るなんて、無理に決まってる。俺はなるべく自我を保てるように、任務を行った。


けど、やはり任務中も色々考えてしまった。ディックの事が一番なんだ。レッドアローが傍に居るとか、関係ない。とにかくディックの事が、心配なんだ。そんな事をメーガンに気付かれ、メーガンは俺の肩をそっと叩いて来た。
「あなたも少し……休むべきよ」
「けど………」
「アクアラッドには、私から言っておくから。ね?」
「………ぁぁ」
あまりメーガンにも心配掛けたくないから、俺は素直に頷いた。
そして、今日の任務が終わると、俺は暫く休む事になった。俺の代わりは、適当にさせると言っていた。まぁアクアラッドなら大丈夫か。
自室に入り、俺はベッドに倒れ込んだ。
別に、疲れている訳ではない。ただ、そう、ディックの事が気掛かりなだけで。その事で、頭がいっぱいだった。ただ、彼の下した判断で、アーセナルを仲間から外したのは、間違いだと思った。いくら仲間を危険に導いたと言っても、本物のスピーディに変わりはなくて。ディックが良く知る人物に変わりはなかった筈なのに。何故、自ら切り離してしまうのか。アーセナルもこの前、俺よりレッドアローを選ぶのかと愚痴を零していたしな。その時は何も言えなかったが、今なら言える。確かに何故、レッドアロー何だ。そりゃ、すり替えられた後はずっと一緒に居ただろうし、ディックのピンチには、必ず来ていたし。けれど、いくらそれらがあったとしても、な。俺は納得行かない所が沢山あった。悩み過ぎたのか、急に眠気が襲って来たので、そのまま眠りについてしまった。

次に目が覚めた時は、アクアラッドに起こされた時だった。
「いつまで寝るつもりだ?もうあれから二日は経ったぞ」
「………は?」
俺は慌てて起き上がり、電子カレンダーを見た。………本当だ。俺はそんなにも眠ってしまっていたのか。
「………はぁ。そこまで悩んでるのなら、何故話さない」
「…………」
「お前が一緒に任務に来ないせいで、大変なんだぞ。アーセナルは単独だからあまり連絡も取れないし。レッドアローはナイトウィングに付きっきりだし」
「…………気にいらねぇ」
「は?」
何で、あの野郎何だよ。俺はまだ認めた訳じゃない。それなのに、何でナイトウィングは………。
「………アクアラッド。俺は、どうすればいい」
「………なら、こうなった理由を話してくれるか?」
「ああ………」
俺は、今の今までの事を話した。飽きられると分かっていたし、殴られる覚悟もあったからだ。


話し終わった後、てっきり殴られるかと思ったけれどアクアラッドは何もして来なかった。
「…………まぁ、ナイトウィングの事を第一に考えるのなら、とにかく今は……休ませてやれ。だから、レッドアローがこっちに来てるんだろう」
そうだとしても………。どうしても、まだ俺はレッドアローの事を許せないし、認められない。だから、あいつの名前を聞くだけで苛つくんだ。
「そろそろ、任務に戻ってくれ。戦力が足りないんだ」
「………あぁ、分かってる」
俺はベッドから降り、アクアラッドと共に任務に向かった。





END

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