Young Justice

□居なくなった君
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ディックが、俺の前から消えた。理解出来なかった。突然過ぎたその出来事は、俺の思考を停止させた。しかも一緒に、スーパーボーイまで消えたとか。まさか。

「あの二人が黙って出掛ける何て、珍しいわね」
メーガン。何でそんなに呑気に言ってんだ。消えたんだぞ?俺のディックが、俺に黙って。
「……あんた達、顔に出過ぎ。スーパーボーイ何だから、大丈夫でしょ?」
あんた達とは、多分俺とレッドアロー。いやいや、スーパーボーイだから油断出来ねえんだろ。あいつが一番何考えてるか、分かんねえしよ。
「ロビンが俺に黙って出掛ける事とか、今までになかったしよ。……余計に心配だ」
「お前の事が嫌いになったんじゃないのか?」
こいつは……!何でレッドアローは俺に対してこんななのかな。俺が何かしたか?それとも俺とディックとの仲が羨ましくて、嫉妬してんのか?
「そんな筈はねえ!」
「なら本人に聞いたのか?」
「そ、れは……」
返せなかった。そうだ。ディックに直接聞いた訳でもない。単なる片思い……。それが俺の心を痛めた。
「……二人共、歪み合う暇があったら、ロビンを探しに行ったら?」
アルテミスが俺達に呆れたように、そう言っていた。まぁ、だよな。けどディックだってちゃんとした理由があるかもしれないし……。
「……いや、ここは大人しく待ってる」
「あら、良いの?」
「確かに心配だけど……。もしかしたら、買い物してるかもしんねーしさ」
……そうだよな。普通に買い物してるよな。きっとそうだ。俺は自分にそう言い聞かせた。ディックなら平気だと。





✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


スーパーボーイから出掛けようと言われた時は、驚きを隠せなかった。まぁスーパーボーイと一緒なら、もし出掛けてる最中に緊急呼び出しがあっても大丈夫だしな。良いよと答え、着替えて一緒に出掛けた。
「……なぁロビン。お前はいつもサングラスやマスクで顔を隠してるけど、何か特別な理由があるのか?」
特別な理由……。そう言われ頭をよぎったのは、ウォーリーの顔だった。そう言えばバットマンとウォーリー以外に素顔は見せていないかも。ウォーリーと一緒に居る時は、普通にサングラスを取るけれど。何でか他の人と居る時は取りたくなかった。
「いや……ないよ?」
「なら取らないか?……お前の素顔を、見てみたい」
そう言えば……スーパーボーイの前で、見せた事無かったっけ。皆と長い時間一緒に居ると、どうしても取った気でいる。
「良いけど……」
多分スーパーボーイは、何も考えずに言っているだろう。まぁそれが彼だけど。僕がサングラスを外すと、スーパーボーイはへぇ、と言って来た。
「綺麗な瞳をしているんだな」
「そう、かな」
「ああ。……隠す必要なんか無いのにな。普段ぐらい外してたらどうだ?せめてマウント・ジャスティスに居る時ぐらいは」
「うーん……」
別にそれでも良いんだけど、何故か僕はウォーリーの許可が無いと駄目だ。とか考えていた。
「……まぁ、無理にとは言わないけど」
「うん、ごめん……」
「謝るなよ」
「うん……」
「………さてと。さっさと買い物を済ませよう。多分そろそろキッドフラッシュやレッドアローが来そうだしな。来たらゆっくり買い物なんか出来ない」
まぁ、それには同意。あの2人が居ると、何故か空気がピリピリするし。何より意見が合わないからいつもぶつかっている。そうなったら買い物どころでは無いだろう。
「えっと、何を買うんだっけ?」
「ああ。このメモに書いてある」
そう言って見せられたメモには、食材の名前がずらりと書いてあった。
「………その、だな。何も出来ない俺でも、料理の簡単なやつなら出来ると思って……」
僕は驚いていた。あのスーパーボーイがまさか自分から料理をしたいと言い出すなんて。
「きっと作れるよ。何なら手伝おうか?」
「ああ、頼む。ロビンが居てくれれば、きっと成功する」
そこでふと僕は思った。メーガンの為に作るのかな?と。だってそうじゃないと、スーパーボーイが自ら料理をしよう、なんて言わないだろうしね。


マーケットで大体買って。それから服を見たり。普通のショッピングをしていた僕ら。するとスーパーボーイが、腹が減ったと言って来たのでピザを食べに行こうと提案した。
……けど、そこに行かなければ良かったと思った。店内に入るなり、レッドアローとウォーリーの姿が見えてしまったのだ。だが幸いにも2人は僕等には気付いていない。そうと分かれば足早に店を出るのが良いと考えた僕は、そっと店を出た。そして足早にピザ屋から離れる。スーパーボーイはそれを察したらしく、黙って付いて来てくれた。


ピザ屋から大体離れた場所に着いた。だが何故か僕は路地裏に来ていた。昔の癖かな。
「……まぁ、ここまで来れば、あの2人も気付かないだろうな」
そうスーパーボーイが言ってくれたが、何故か来そうでたまらなかった。はぁとため息を付いていると、スーパーボーイは僕の腕を掴み、自分の方に引き寄せた。僕は何が起きたか、分かっていなかった。
「……?」
「………俺ならお前を悩ませたり、苦しませたりしないのに」
ううん?スーパーボーイ?僕の思考は、完全に停止していた。訳が分からない。何でスーパーボーイが僕を、抱き締めているんだろう。だって彼にはメーガンが居る筈のに。僕が混乱していると、それに気付いたスーパーボーイは、そっと口を開いた。
「……ロビン。俺、お前の事が好きなんだ。チームメイトとしてじゃなく、恋愛として」
えっえっ?未だに状況が読み込めないのは、何故なんだろう。だってスーパーボーイはメーガンの事が好きで……。だから手作り料理をしようとして、買い物をしていたんじゃないのか?頭がパンクしそうだ。スーパーボーイの考えが、まるで読めない。
「ロビン……。………何でサングラスを取ってと言ったと思う?……確かに素顔を見たいと言うのは事実だ。だがそれだけじゃなくて、お前の新しい一面も見たかったんだ。……出来ることなら、俺だけに見せる何かが欲しいが、贅沢は言っていられない」
そう言いつつ、さっきよりも強く僕を抱き締めてくる。ウォーリー以外に抱き締められたのって、そう言えば初めてだな。そんな事を悠長に考えていたら、スーパーボーイの手が背中にあったのに、いつの間にか僕の顎を掴んでいた。
「ロビン………」
流石にこれはまずい。僕が止めてと言おうとした時の事だった。聞き慣れた声が聞こえたのだ。

「おい、スーパーボーイ。お前、何やってんの?」



✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


ディックの気配がして。それを辿って来たら、スーパーボーイがディックを抱き締めてて、しかもキスをしようとしていた。だから止めた。当たり前だ。俺のディックに、何してんの。
「……お前、自分が何してるか、分かってんの?」
「ああ」
「ならとっとと離れろよ。俺のロビンから」
「……いつから、お前のだそんな権限は、お前にない」
どいつもこいつも……!何でこんななんだよ。正式に付き合わなきゃ、そんな事言う資格無いみたいな。
「………良いから、ロビンから離れろ」
やっとディックから離れるスーパーボーイ。ったくこいつは……。そうして俺はロビンを引き寄せた。
「何もされてないよな?」
「うん……」
「良かった……。おい、スーパーボーイ。お前にはメーガンが居るだろ?何でロビンに手ぇ出すんだよ」
流石の俺も、冷静さを保てなくて。怒りを露わにしていた。多分俺からしたら珍しい。まぁ、うん。ディック絡みになると、こうなんだよ。
「……彼女の事が好きだと言った覚えはない」
……と言われればそうか。こいつは感情を表に出さないから、全く分からなかったな。けど、何でディックなんだよ。
「……なら何でロビンに手を出した。訳を言え」
「………不思議とロビンと居る時は、心が安らぐ。それに傍に居て楽しい。これが何なのかをブラックキャナリーに聞いたら、恋だと言われた。俺からしたら理解するのに多少の時間が掛かったが、理解出来た」
「だからロビンを抱き締めてたと?」
「ああ」
それは分かるよ。分かるけど……明らかにキスしようとしてだろ。それは何処で教わったんだ?TVか?……いや今はそんな事はどうだって良い。問題は、ディックに手を出した事だ。
「………ウォーリー。止めてくれよ。仲間同士で争うのは」
「ロビン……。けどこいつはお前を……」
「そうだとしても、仲間を傷付ける事は、嫌だ」
くそっ。ディックに救われやがって……。俺は仕方なく引くことにした。



そしてマウント・ジャスティスに戻って。スーパーボーイとディックはこれから料理をするとか言い始めて。俺も参加するって言ったら、アルテミスに止められた。ついでにレッドアローもやろうとしてたけど、何でかアクアラッドに止められてたな。
そんでその日の夜は、2人が作った飯を食っていた。……文句言わずに、スーパーボーイが作った飯も食ったさ。美味かったしよ。けど一番美味かったのは、ディックの作った料理だな。

こりゃディックを独り占めするまでには、まだまだ時間が掛かりそうだな。








END

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