TEEN TITANS

□執着心
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スレイドが死んだと言う事を、まだ信用出来なかった。あのスレイドがこうも簡単に死ぬなんて、有り得ない。けど皆は死んだと信じている。勿論僕だって信じたいさ。けど、それが難しい。これがスレイドじゃなかったら、きっと簡単に信じてる。けどスレイドであって。信じたくても信じれないのだ。
どんな敵と戦っている時も、僕はスレイドの事が気掛かりだった。だからスレイドと戦っている時が一番楽だった。倒すべき一番の敵が目の前に居るのだから。けど今は居ない。それに死んだと思われてる。……いや、もしかしたら、本当に死んだのかもしれない。けど、……。そんな事を繰り返し考え、一日が簡単に消えて行く。この目で遺体を見た訳じゃないから、ここまで信じれないのだろうと、思った。そう思い込むしかない。そうしなければ、新たな敵と戦えもしない。

僕は自分の部屋に置いてあるスレイドの仮面を手に取った。こんなもの、早く仕舞わなきゃ。これじゃいつまで経っても、スレイドの事を忘れる事が出来ない。だがこの仮面が何かを告げている気がするんだ。危険と言うシグナルを……。部屋にノックの音が響き、ビーストボーイが部屋に入って来た。
「今平気?って、まだスレイドの仮面なんか持ってたの?早く捨てなよ」
「………いや、捨てはしないさ。倉庫に、仕舞っておくよ」
僕はそう言うと、ビーストボーイを部屋に残し、倉庫へと向かった。

倉庫の、色んなガラクタが入っている箱の中に、その仮面を置いた。
「……スレイド」
本当にお前が死んだのなら、何故僕の心はスッキリしないんだ。多分遺体をこの目で見ても、僕は納得出来ないと思う。不思議だよ。これがスレイドじゃなければ、簡単に信じるのに。僕はその箱を仕舞い、倉庫を後にした。


けど、それから数日が経って。ふと急に、スレイドの事が頭に浮かんだ。だから倉庫に向かい、あの箱を取り出し、スレイドの仮面を手に取った。けど何故か埃がもう被っていて、僕はその埃を吸ってしまった。その時だ、サイボーグが倉庫に入って来た。
「いい加減にしろよ。スレイドは」
「分かってるよ」
分かってる。いくら自分にそう言い聞かせても結局無駄で。結局僕は、スレイドに捕まったままなんだ。その時だった、警報が鳴り響いた。
「事件だ!」
僕は慌てて階段を駆け上がり、サイボーグと共に皆のと所へ向かった。
悪い予感って、何で当たるんだろうね。この時、心の何処かでそう思っていたんだ。何か良くない事が起きるって。



そして、その予感は的中してしまって。僕はスレイドと、出会ってしまった。けど何故か僕にしか見えていなくて。声も、僕にしか聞こえてなかった。最初は幻聴と幻覚かと疑ったけど、幻覚が攻撃して、その傷が残る訳ない。だからこれは現実なんだと、思っていた。
けど実際は幻覚、幻聴で。スレイドはそこには居なかった。サイボーグのお陰で、身体からスレイドが撒いたウイルスを取り出す事は出来た。けれど、疑問が残った。このウイルスは、操る者が居る筈だと。ならやっぱりスレイドは生きていて、影で僕を殺そうとしていたんじゃないだろうか。ってスレイドが僕を殺す訳ないか。何せ僕が欲しいんだろうからさ。とにかく、僕だけを狙っている事は確実で。スレイドは生きているんだ。けれどそれを皆に言った所で、どうにでもなる訳じゃない。とにかく、スレイドを追い掛け過ぎたって伝えて、僕は自室に戻った。疲れた身体を休めたいから、ベッドに倒れ込んだ。
こう思うと、あの仮面を処分しなかった僕がいけなかった。何で直ぐに捨てなかったんだろう。どれだけスレイドに拘っているんだろう。馬鹿みたいだ。………けど、もし僕がスレイドを殺せたら、バットマンは、どんな顔をするんだろう。いや殺すだなんて考えたら駄目だ。捕まえて刑務所に入れなきゃ。それで、その事を彼に伝えたら、怒られるだろうか。そんな事を考えていたら、僕はいつの間にか眠っていた。


次に目が覚めた時には、ベッドサイドにスピーディが座っていた。いつの間にか掛かっていた布団を退かし、目を擦った。
「おはよう」
「スピーディ………」
「ちゃんと休めたか?」
「まあまあ、かな」
「なら今日は一日中寝てろ。仕事なら、俺が代わりに行くから」
「ごめん……」
僕は布団に潜り込んだ。
「………?何で君がここにいるんだ?」
「スターファイアに来て、て言われたんだ。ロビンが大変な事になってるってな」
「スターが……」
まさか彼女がそんな事を言うなんて。珍し過ぎて、僕は言葉が出て来なかった。
「けど、遅くなっちまった。ごめんな……」
スピーディは僕の頭を撫でてくれた。遅いって、そんな事無いのに、何故か声が出なかった。
「僕がもう少し早くこっちに来れてれば……ロビンがこんなにも傷付く事も無かったのに……」
「………ううん、今、こうして一緒に居てくれるだけでも、有り難いよ。ありがとう」
「ロビン……」
スピーディが傍に居て安心したのか、僕はそのまま深い眠りに落ちようとしていた。
「スピーディ、事件だ。手伝ってくれ」
「サイボーグか。ああ、分かった。今行くよ。ロビン、行って来る。大人しく寝てろよ」
うん、て言おうとしたけど、もう遅かった。僕は眠った。


相当疲れていたらしく、あれから……朝早かったと思うから、6時ぐらいかな。とにかくそれから夜の8時ぐらいまでずっと眠っていたらしい。スターが心配になって、起こしに来てくれた。そして皆の所へ向かった。

皆、僕の事に気を使って、何かで励まそうとしてくれた。レイヴンが晩ご飯を作ったり、スターがビーストボーイの真似をしたり……。楽しい時間をくれた。そうだよな。リーダーがこんなんじゃ駄目だよね。元気を取り戻さなきゃ。けれど、事件があったらスピーディが行ってくれるから、その内にもう少し休んでおこうと思った。何かあったら僕が指令を出す感じで。
「ロビン、安心しろ。何が何でもお前の事は、僕が守るからな」
スピーディ……。やっぱり優しいな。バットマン以外に、ここまで心を開けた人物だよ。敢えてそうは言わないけれど、僕は頷いた。

仲間との時間を大切にしようと、改めて思った瞬間でもあった。だから、早く仕事が出来るように頑張るよ。





END

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