The sky which embraces you

□act0 トリップに至るまで
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イタリア某所………





コンコン



規則正しいノック音が木製の扉から聞こえた



『兄さん、入りますよ』



今この建物内で、彼を兄と呼ぶ人物は一人しかいない


彼は山のように積み上げられた書類から顔をあげて扉を見やる



「どーぞ
鍵は開いてるよ」



ギィィ、と少し軋んだ音をたてて開く扉から室内へ、一人の女性が入ってきた



薄い金色の髪を無造作に一つに纏め、仕立ての良いスーツに身を包んだ小柄で華奢な女性



女性は呆れたように溜め息をつくと、手にした数枚の書類を彼に差し出す



『不用心ですよ、兄さん』


「はは、ごめんごめん」



少し眉を下げて笑う彼に再度溜め息をこぼす女性



「満身創痍って顔してるね
慣れないパーティは疲れたでしょ?」


『ええ全くです』



即答した彼女に、再度困ったように笑う彼



『でもその慣れないパーティのお陰で尻尾は掴めましたよ』



彼女が口角をつり上げて不敵に笑う



スゥッ、と細められた眼は獲物を狙う捕食者を連想させる



「ははっ
やっぱり仕事の時のソラは怖いなぁ」


『いや、僕よりにーちゃんの方が遥かに恐ろしいだろ…』


「ソラ、素が出てるよ素が」


『おっと……
失礼しました』



こほん、と咳払いをひとつ



『では報告は以上です
詳細はそこに書いてあります』


「了解
次の任務のメンバーは夜空に任せるよ」

『わかりました』




「頼りにしてるよ?

【副ボス】さん」



彼も、小さく口角をあげて彼女を見た




『オーケー、ボス』



にやり



お互い見合わせた顔に効果音をつけるなら、これが一番ぴったりだろう




イタリアには数多くのマフィアが犇(ひし)めいている



年若き彼らもまた、その内の1つであった



新たなボスに就任した沢田綱吉


その妹、沢田夜空は副ボスに就任


ボスと副ボス率いる7名の守護者を筆頭に、イタリアに君臨する巨大なファミリー



その名は
【ボンゴレファミリー】



遠い昔から繁栄を続けてきたイタリア最大級のマフィアである





そして現在



彼らがボンゴレという存在を知ってから、もうすぐ10年の歳月が経とうとしていた
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