シュガーでごめんあそばせ

□10
1ページ/4ページ


クー、と鳥が空の向こうで今日も鳴いていた。
海鳥の白は空の青と海の深蒼に良く映える。


「なおったーーーっ!!!」


麦わら帽子を掲げて喜ぶ彼の赤いベストもまた、青空と海に良く映えていた。


ルフィの持つ麦わら帽子は、バギーにやられた切り傷など無かったかのように元通りになっていた。


「応急処置よ。穴を塞いだだけ」


私の隣で、ソーイングセットをしまいながらナミ姉さんが呟く。


「強くつついたりしない限り大丈夫だと思うけど」


「いやー、わかんねェわかんねェ。ありがとう」


「良かったですねールフィー」


ナミ姉さんの隣で投げナイフを磨きながら呟けば、嬉しそうな声で返事が返ってきた。


「あんなにボロボロの帽子をここまでなお……」


ズボッ。


『あ。』


穴、開いちゃった……。


「人の話をちゃんと聞けェ!!」


「ぎゃあああああ!!!」


ナミ姉さんの手にした針がルフィの額に突き刺さる。アホだ。


「はりで刺すなよ!痛ェだろ!!」


「殴っても効かないから刺すしかないでしょ!?」


ナミ姉さんの怒鳴り声に額を抑えていたルフィもああなるほど、と言った風な顔を浮かべる。


「ああ、そりゃそうか!」

「納得すんなー」


ルフィ達には視線を向けず、甲板に座ってナイフを磨きながら呟く。



「お前らうるせェな。眠れねェじゃねェか」


ムク、と眠っていたゾロが起き上がる。よくそこで眠れるね。


「おれはハラもへってんだ……。おい、何か食料わけてくれよ」


「ナミ姉さーん、あげてもいいですかー?」

「有料ならいいわよ」

「金取るのかよ!」


ナミ姉さんとは実に気が合いそうだと思った。


「だいたいあんた達おかしいわよ。航海する気本当にあんの!?食料も水も持ってないなんて!」


ゾロにパンを投げ渡せば、ナミ姉さんの説教タイムが始まった。


「海をナメてるとしか思えないわ!!よく今まで生きてられたわね」


「まあ何とかな」


「なー」


呆れた、とため息をつくと、ルフィが何かを見つけたのか声をあげた。


「なんか見えるぞ」


手元のナイフから顔をあげ、ルフィが指差した方を見れば、確かに水平線の上に何かが浮かんでいた。


「おい!島だ!!」


島、と聞いてナミ姉さんはバッグから双眼鏡を取り出してそちらを見た。


「ああ、あれはダメね。無人島よ」


「無人島ですかー」


なぜかルフィがオールを手にしていたのを横目で確認した。


「いくだけムダ。進路はこのまま……」

「ナミ姉さんナミ姉さん」

「ん?」

「手遅れですー」


私が指差した方にはオールを漕いで無人島に向かう二人の姿。


「待てッ!!!」


鬼のような形相でナミ姉さんが怒鳴ったが、二人は上陸する気満々だった。


そしてため息をつきながら、私たちも上陸するためにオールを漕ぎ始めたのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ