シュガーでごめんあそばせ

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ニタリ。まさにそんな表現がふさわしいだろう。


目の前の優男はいくつものナイフを手に私を見ていた。


「……何これデジャヴー。アンタ私の仕事仲間の変態そっくりー」


ぞわぞわと逆立つ両腕をさすりながら呟けば、ジギーはニコリと笑う。


「おれその人と話合いそうV」


「あー、そうですねー。合いそうですねー」


この人青い果実とか言い出したらどうしよう。それでショタっ子ストーカーし始めたらどうしよう。


「な、何コイツ……」


「多分変人で変態で気まぐれで戦闘狂で大嘘つきで殺人鬼でドSでドMの変態野郎ですー」


「あれっ、全部合ってるー」


『!?』


なんで分かったの、なんて聞くから頭を抱えたくなった。


どうしよう、変態って異世界共通なんだ。どうしよう。


「んー、まァいっか。ねェねェお嬢さん、おれと殺し愛ましょー」


「え、いいんですかー?よっしゃー、患部なきまでにブチのめすー」


「あははっ!お嬢さん強気だねェ!」


軽く笑いながらナイフを弄るジギー。お姉さんをルフィの方に避難させ、ダガーを握りしめた。


「ねェお嬢さん、お名前は?」

「どうせ忘れるんでしょー?名乗りませんよー」

「ハハッ!それもそうだ、ね!!」


ヒュン、と風を切ってナイフが飛んでくる。それを軽いステップを踏んで避け、ジギーへ突っ込む。


ジギーはニタリ、とこれまた嬉しそうな笑みを浮かべ、ナイフを避けた私を見ていた。


その笑みを不快に思いながらダガーを振りかぶれば、ジギーも大振りのナイフでそれを受け止める。


ぎぃん!


鈍い金属音がその場に木霊する。


交錯したナイフは互いに擦れ合い、刀身から火花を散らす。



「お嬢さん、やっぱり強いねェ……イイ、すごくイイよ……」



恍惚とした顔で幾分背の低い私を見下ろすジギー。


ダメだ、あの奇術師にしか見えない。男の急所おもっくそ潰したい。



「……急所潰してもいいですかー?てか存在自体抹消してもいいですかー」


「うわぁ、おれどんだけ君に嫌われてんの」



ケラケラと笑いながらジギーはナイフに体重をかけてくる。


私はそれを顔色一つ変えずに受け止め、空いたもう片方の手でポーチをまさぐる。


取り出したのはいつぞやの針。
それをジギーに向けて容赦なく投げれば、彼は避けた拍子にナイフを離す。


「え、何これ針!?痛っ!!針のくせに何これ超痛い!!」


そりゃあ念でコーティングしてるからな、とは言わなかった。


「いってェー……って……ん?」


針のかすった手をさすっていたジギーは私のポーチを見て首をかしげている。


「アレ……その青緑の殻……」

「青緑?」


ああ、と思いだし、ポーチからカタツムリちゃんを取り出して手に乗せる。


「このカタツムリちゃんですー」


「ああっ!!それおれの電電虫のフェアリーちゃん!!」



名前がずいぶんと乙女ちっくだな。
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