シュガーでごめんあそばせ
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「くらっ!!小童ども!!」
ルフィと犬がボコスカやっていると、まるでプードルみたいな髪をした男性が怒鳴った。
「シュシュをいじめるんじゃねェっ!!」
「シュシュ?」
「誰だおっさん」
「鎧重くないんですかー?」
思い思いの質問をすると、男性はこの町の町長だと答えた。
ちなみに鎧は重くないそうです。おじいちゃんすげェ。
*
「ゾロは?」
「休ませてきた。となりはわしの家じゃ」
「一応止血とかはしときましたけどねー」
町長さんの好意に甘え、ゾロを彼の家まで引きずって帰ってきた。
「避難所へ行けば医者がおると言うとるのに寝りゃなおると言って聞かんのじゃ。すごい出血だとゆうのに!!」
「けっこーザックリ刺されてましたしねー。つーかナイフ貫通してましたー」
シュシュというらしい、鍵を飲み込んだ犬を撫でながら呟く。
「こいつここで何やってんだ?」
「店番さ。わしはエサさながらをやりに来ただけさながらなんじゃ」
「町長さんさながらの使い方合ってますかー」
私の呟きに、隣でエサを食べていたシュシュがワンと鳴く。
「よく見たらここお店なんだ!
ペットフード屋さんか……」
お姉さんのいったとおり、店にはペットフードと書かれた看板が掲げられていた。
「この店の主人はわしの親友のじじいでな。この店は10年ほど前、そいつとシュシュが一緒に開いた店なんだ。二人にとっては思い出がたくさん詰まった大切な店じゃ」
わしも好きだがね、と煙管をふかしながら町長さんは語る。
「この傷を見ろ。きっと海賊と戦って店を守ったのだ」
シュシュの体にはいくつも怪我が刻まれていた。勇敢な犬だと、労るようにその背中を優しく撫でる。
「だけど!いくら大切でも海賊相手に店番させる事ないじゃない。店の主人はみんなと避難してるんでしょ?」
「いや……奴はもう、病気で死んじまったよ。三か月前にな。病院へ行ったっきり」
悲しげに顔を伏せ語る町長さん。煙管から出る煙が、ふわりと揺れた。
「もしかしてそれからずっと、おじいさんの帰りを待ってるの?」
お姉さんのといかけに、町長さんは笑みを浮かべた。
「みんなそう言うがね……わしは違うと思う。シュシュは頭のいい犬だから、主人が死んだ事くらいとうに知っておるだろう」
じっ、とルフィはシュシュを黙って見つめる。
「じゃ、どうして店番なんて……」
「きっとこの店は、シュシュにとって宝なんじゃ。大好きだった主人の形見だからそれを守り続けとるのだとわしは思う」
ちら、と店の中に目を向ければ、カウンターの後ろには写真が飾られていた。
シュシュと、それからきっと、この店の主人が、店を背景に写っているものだった。
古ぼけた写真は大切に飾られ、彼らは笑いながらそこに写っている。
「困ったもんよわしが何度避難させようとしても一歩たりともここを動こうとせんのだ。放っときゃ餓死しても居続けるらしい」
フゥ、と煙とため息を同時に吐き出し、お姉さんは穏やかに笑っている。
ーーグオオォオオォ……!!!!
どこからか猛獣の低い唸り声が聞こえた。
町長さんとお姉さんは肩を震わせ、何事だといった表情を浮かべている。
「な……何、この雄叫び……!!」
「こ……こりゃあいつじゃ!!“猛獣使いのモージ”じゃ!!」
あの海賊、サーカス団の方が向いてるんじゃね?と思った。
『逃げろォーーーーっ!!!』
お姉さん達は脱兎のごとく逃げ出し、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
取り残された私は檻の上にひょい、と飛び乗る。
「あーあ、なんか来ちまったよ
鍵返せよお前ェ」
「ガウ」
「なんか来ますよールフィー」
そう言った直後、地面を揺らすような足音が響き渡った。