シュガーでごめんあそばせ

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「お」


唐突に聞こえたゾロの声に、本から顔を上げる。


「鳥だ」

「でけェなわりと……」


空を見上げれば、大きめの鳥がばさばさと上空を飛んでいた。


3人の間に、しばしの間が開く。


「……あの鳥、食べればいいんじゃないー?」


私がそう呟いた瞬間、ルフィが体を勢い良く起こした。


「食おう!!あの鳥っ!!」

「どうやって?」


「おれが捕まえてくる!
まかせろ!!

ゴムゴムの……」


のばした手で帆の両脇をつかみ、ゴムの反動で勢い良く飛んでいった。


「ロケット!!!」


バシュン!!


まさにロケットのように、鳥に突っ込んでいくルフィ。


「なるほどね……」

「ゴム人間って便利ー」


頭上から降る太陽の光を手で遮り、それを見るゾロと私。





パクッ。



頭上から、そんな間抜けな音が聞こえてきた。
ついでにルフィのやっちまった!みたいな声も聞こえてくる。


『は!?』


ゾロと声をハモらせ、よく見ればルフィの頭は鳥の嘴にくわえられていた。


くどいようだが、今度はルフィのやっちまった!みたいな顔が見えた。




間。




「ぎゃーーーーっ!!
助けてェェーーーっ!!!」


叫ぶルフィをくわえたまま、ばっさばっさと鳥は飛んでいく。



『あほーーーーーーっ!!!!』



くわっ!と鬼のような形相で叫ぶゾロと私。


クールな対応が売りの私も、今回ばかりは冷静さをポイした。


「一体何やってんだてめェはァ!!!」

「アンタ馬鹿!?アンタ馬鹿!!?アンタ馬鹿!!!?」


ゾロと一緒になって必死にオールを漕ぐ。


口調が十二支んの鳥さんのようになってしまったのも致し方ない。


やべぇ、アイツ馬鹿野郎だ。


ギーコギーコと音を立て、持ち前の怪力でオールを漕ぐ。


船は凄まじいスピードでルフィを追いかける。


これもう小船が出していいスピードじゃないよ。海上にも速度規制があったら速攻でレッドカード出されるよ。



「おーーーい止まってくれェ!!」

「そこの船止まれェ!!」


オールの音とルフィの叫び声に混じり、海面から知らぬ声が聞こえてきた。


「遭難者か……こんな時にっ!!
船は止めねェ!!勝手に乗り込め!!」

「これ乗り込めるスピードじゃないでしょー、下手したら轢き殺しますってこれー」

「そんときはそん時だ」

「ひでぇ」


はたから見れば普通に会話しているように見えるが、船はありえないスピードでルフィを追いかけている。


レーシングカーもビックリな速度を手漕ぎで出してますがなにか。


「うお!!」

「どわああっ!!」


遭難者は轢かれる前になんとか船に乗り込めたようだ。


「へえ!よく乗り込めたな」

「追い込まれた人間の底力ってすごいー」

『ひき殺す気かっ!!』


のんきに笑う私たちに、もっともなツッコミをいれる遭難者。


「おい、船を止めろ」


乗り込んだ遭難者×3名は獲物を持ち、脅してくる。


「おれ達ァあの”道化のバギー“様の一味のモンだ」




『あァ?』



瞳孔の開いた目で睨むゾロと共に、遭難者もとい海賊の部下をボッコボコにし従わせたのは、わずか数十秒後のことだった。
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