シュガーでごめんあそばせ

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「あーー腹へったーーー」


波の音と、海鳥の声と、それからパラパラと本をめくる音が響く。


「だいたいお前らが航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?」


「暗殺者に航海術は不要でしたのでー。我が家で教わるものと言えば暗殺術とか拷問術とかーそういうのばっかりでしたよー」


「お前んちホント物騒だな」


「おかしくねェよ!漂流してたんだもん、おれは!」


「胸張っていうなしー」


ルフィの頭に影御手を振り下ろせば、それはゴスっ、という鈍い音をたてた。


「何すんだよエア!痛ェじゃねェか!」


「胸張って言うことじゃないよー、それはー」


船縁に腰を下ろし、足を組んで本を読みふける。



「ゾロこそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」


「おれはそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。ある男を探しにとりあえず海へ出たら、自分の村へも帰れなくなっちまったんだ。仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた……それだけだ」


「なんだお前も迷子か」

「その言い方はよせ!!」


目くじらを立てて怒るゾロ。
いや、その経歴だと誰もが迷子だと思う気がする。


「まったく……航海もできねェなんて海賊が聞いて呆れるぜ!
これじゃ”偉大なる航路“も目指しようがねェ。早ェとこ“航海士”を仲間にいれるべきだな」


ゾロの言い分はもっともだ。

優れた航海術を持つ人物を引き入れないと本気で死ぬ、この二人だけだと。


「あと”コック“とさ“音楽家”とさァ……」

「んなモン後でいいんだよ!!」


他に必要(?)なポジションを指折り数えるルフィに、ゾロは牙を剥いて怒鳴る。


「でもコックは必要だと思いますよー?海上での食材は限られてる訳ですしー、栄養バランスを考えた食事は大切ですよー」


そう言えば、ルフィはだろ!?と目を輝かせる。


「でも優先順位は航海士が先ですよー。その次は過酷な海を渡るための船か、もしくはコックですねー。あとはー……船が壊れたときのための船大工、病気や怪我に対応するための船医、それからもちろん戦闘員も必須ですねー。後方支援のための狙撃主とか。そういった人を優先的に勧誘していきましょー」


「えぇ!?音楽家は!?」


「んなモン後ですー。まずは船旅を安全かつ確実に進めるために必要な仲間を集めることを優先しますよー。音楽家は二の次ですー」


バッサリと言い放てば、ルフィはひどく落ち込んだようにいじけて寝転がり、ゾロは感心したような目をむける。


「エアお前……人並みに常識あったんだな」

「そろそろアンタ刺し殺して良いですかー?」


ゾロのその言動にイラッときたためダガーを向けると、ゾロもルフィと同じように寝転がった。


『腹へった』


二人の腹の虫が盛大に鳴り、軽く頭を抱えたくなる。



「……まずは航海士と十分な食料の確保が先決ですねー」



二人が空腹で寝転がるなか、絶食などどうってことない私はため息を吐き出す。


どうやら彼らとの船旅は、前途多難のようです。
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