シュガーでごめんあそばせ

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目が覚めると、そこには青空が広がっていた。


瞬きを何度も繰り返し、ゆっくりと上体を起こす。


私が横たわっていたのは人が何人か入れるくらいの大きさの船だった。


ただし……


「手作り感満載ですねー。ボロッ」


かなりぼろっちい船だった。なんだか即行で転覆しそうな気がするのは気のせいだろうか。


「ていうかここどこですかー?
森のなかみたいですけどー」


周りを見渡しても誰もいない。
ただ緑が広がっているばかりだった。


「荷物とかもあの時のままみたいですねー。あ、飴入ってたーラッキー」


コロコロと口の中であめ玉を転がし、船縁に腰を下ろす。


「これからどうしましょうかねー。携帯も圏外だしー多分通貨も違うでしょうしー」


ここが異世界だと言う事実をあっさりと受け止めている自分は、ずいぶんと順応性が高い気がする。


「あー……手っ取り早くこっちでも殺し屋しますかねー」


そうすれば楽に稼げるが、それでは元の世界と何も変わらない。

何のために異世界に来させられたのだと言う話だ。


「いやーでもあの電波野郎ー
人の願望をズケズケと口にしやがってー
これじゃー今まであの家の教育方針に耐えてた私の立場がないじゃないかー」


やれやれ、とため息の代わりにあめ玉を噛み砕くと、どこかから声が聞こえてきた。


「あれー?男の子の声だー。ここの住人ですかねー?」


住人なら怖がらせてはいけない。

警戒心により少し出ていた殺気をしまい、船縁に座ったままのんびりとくつろぐ。



まぁ、危ない人だったらすぐに殺せばいい。



「あの、小舟ならこっちに………
………って誰!!?」


「やー、どーもこんにちはー」


見知らぬ私にオーバーなリアクションをした、ピンクの髪の小柄な少年に向け、気さくに片手を上げる。


「ん?誰だお前」


その横にいた麦わら帽子の少年が、私を見て首をかしげる。


「私はエア=ゾルディックと言いますー。どうぞよろしくー」


「ゾルディックが名前なんですか?変わった名前ですね……」


「あー……こちらでは名前とファミリーネームは逆でしたかー
エアは名前でゾルディックがファミリーネームなんですよー丸眼鏡さんー」


「あ、そ、そうなんですか!?
すいません!ていうか丸眼鏡って……ぼくはコビーと言います」


「お前変な名前だなァ!
俺はルフィ、よろしく!」


「いえー、こちらこそー。

でもゾルディックの名前を出して怖がられたり逃げられたりはしてましたけどー変な名前って言われたのは初めてですーちょっとイラッときましたー」


「そーか、悪ィ悪ィ」


「アンタ反省する気皆無じゃないですかー」
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