The sky which embraces you

□act1 気がつけば
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ボンゴレアジトのくっそ長い廊下に、ヒールの音が木霊する



正直言ってハイヒールは好きじゃない。歩きにくい。動きづらい。



でも京子さんとハルさんが「女の子なんだからお洒落しなきゃ」と言ってたので履きます。喜んで



「ソラ〜
ちょっと頼みたいことがあるんだけど〜」


『はい只今!』



執務室からひょっこりと顔を覗かせた兄さんが視界に入ったとたん近くまで瞬時に移動する



ハイヒール履いてるのにものすごい瞬発力発揮したよ今




「書類整理終わらなくてさ
ちょっと手伝ってくれない?」


『兄さんの頼みとあれば喜んで!』


「ソラありがとう」


優しく頭を撫でてくれる兄さん


そんな兄さんにふにゃりとした笑顔を向けてから執務室へ入る




『さぁ、頑張りましょうか!』


「おぉ…仕事モード……」




+++++



「『お、終わった……!!;;』」



二人同時に、ぐったりと机に突っ伏す


いつの間にか外は暗くなっている


「ソラ、お疲れさま」

『おー疲れィ……』



疲れきった顔で片手をあげ、俺を見るソラの頭を労るように撫でてや る



『昼飯食いっぱぐれた……』


「じゃあ何か頼む?」


『ハンバーグ!』



ソラは案の定、一番好きな料理を即答した



心なしか目もキラキラ輝いていて、思わずクスリと笑ってしまう



『な、何だよぅ……』



拗ねたように口を尖らせるソラ



ああ、可愛い



「ごめんごめん
コックに頼んでハンバーグ作って貰おうね」



といっても、もう事前に頼んであるんだけどね



ソラはすぐさまパァッ、と明るい笑顔を浮かべた



『やった!ハンバーグだ!』



子供のように喜ぶソラを見て、またクスクスと笑う



ああ、本当に可愛い



「あ、ちょっといい?」



執務室から少し顔を出し、近くを通った部下を適当に捕まえて用件を伝える



「じゃあよろしくね」


「はい!」


そう言えば部下はすぐさま飛んでいった


流石俺の部下、仕事が速くて助かるね




「ソラ、ご飯まで少し話してようよ」

『うん!』

「あ、そういえばワインあるけど飲む?」

『飲む』

「じゃあグラス出しておいて」

『はーい』



ソラは備え付けられたグラス棚に、俺はワインセラーに足を運び、ソラの好きそうな銘柄を選ぶ



ソラはアルコールが苦手だから、できるだけ口当たりが良い甘口だけを厳選する



「うーん………
ロゼワインと白ワインあるけど
どっちが良い?」



背後にいるソラからの返事はない



いつもならすぐさま返事が返ってくるはずだ



「ねぇソラ、聞いてる?」



振り返れば、そこにいるはずのソラの姿はなかった



「…………ソラ………?」



俺の小さな呟きが、広い室内にやけに響いていた
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