◇◇◇

□花より団子?
1ページ/2ページ




 僕の可愛い恋人に初めて贈った誕生日プレゼントは梨一箱だった。一緒に告白もしたからか、渡したときは驚いていたみたいだけど喜んでくれたと思う。翌日、彼女は贈った梨でタルトを作ってくれて、それから僕達は付き合うことになったんだ。
 以来、僕は毎年の誕生日プレゼントに、箱いっぱいの食べ物を贈っている。付き合い始めた翌年は葡萄で、昨年は栗だ。どれも喜んでくれたから、今年はさつまいもにしようと用意していたのに、周りのうるさいヤツらに止められた。
 女の子の誕生日に段ボール箱で食べ物とかありえないとか、せめて形の残る物にしろとか、まったく余計なお世話だよね。でも、形の残る物というのはちょっと良いかもしれない。だけど何にすればいいのかが分からないから、一応ソイツに訊いてみたんだ。そうしたら、まかせとけとか言って、あれよあれよと言う間に渡す場所までセッティングされていた。
 腹立たしいことこの上ないけれど、女の子はこういうのを喜ぶのかな?僕にはよく分からないから、一度くらいはやってみてもいいかもしれない。
 だからさつまいもは置いといて、とりあえず場所だけはそこにすることにしたのだけど…





 美しく盛り付けされた料理。華美ではないが高級感溢れるモダンな内装の店内。窓の外には煌びやかな夜景が広がっている。
 そんな某ホテルの最上階にあるフレンチレストランの一番良い席に座るのは、まだ年若いカップル。雲雀恭弥と沢田綱吉だった。中学生からお付き合いを始めて早三年。それでも高校生のデート先としては高級すぎるが、今日は綱吉の誕生日。それを祝うのならばこのくらい…とは、陽気な某イタリア人の言葉だ。
「綱吉。美味しい?」
「はい!とっても」
「そう」
 多少緊張しているようではあったが、綱吉はふにゃりとした可愛らしい笑顔を雲雀に向ける。ここに連れてきた直後はひたすら落ち着かない様子だったので、場所をセッティングした勝手に師を名乗るムカつく男を咬み殺そうと思っていた雲雀だが、それはやめておいてあげることにした。
 美味しい料理に舌鼓を打ち、綺麗な夜景に感歎する。やはり女の子はこういうシチュエーションが好きなのだろうか。しかし雲雀は何か物足りなさを感じていた。
 群れ嫌いな雲雀のために貸切にされたレストランで、二人っきりの食事は和やかに進む。デザートが運ばれてくる頃には、綱吉の緊張も消え去ったようだ。
 甘い物は別格なのか、幸せそうにデザートを頬張る綱吉に雲雀が、はい。と何かを渡す。
「これは…?」
「誕生日プレゼントだよ」
「ふぇ!?この食事がプレゼントじゃなかったんですか?」
「違うよ」
 雲雀は憮然とした表情で否定する。場所のセッティングは自称師匠だ。それをプレゼントだと思われるのは腹立たしい。
「とにかく、僕からのプレゼントはそれだから」
「は、はい…ありがとうございます!あの、開けてみても?」
「どうぞ」
 綺麗なラッピングを解くと、小さな小箱が出てくる。そっと開ければ可愛らしいデザインの指輪が現れた。
「ふぁ、可愛い〜」
 綱吉の瞳が大きく見開れ、キラキラと輝きだす。普段アクセサリーに興味を示さない彼女だが、これは気に入ったようだった。
「着けてあげるよ」
 指輪を箱から出し綱吉の手を取って嵌める。華奢な指にそれはよく似合った。
「あ、ありがとうございます。でも、あの…」
 指輪が着けられたのは左手薬指だった。それが意味することに気付き、綱吉は照れながらも戸惑いの色を見せる。
「ここにしておいて。もう少ししたら正式な物を贈るから」
「せ、正式っ!?」
「駄目?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ