□BirthdayDate
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 あれ?あれれ?離さなくていいのか…な?

 雲雀が離そうとしないのか、綱吉が離そうとしないのか、それがよく分からない。結局、二人は手を繋いだまま、デートを続けることになった。





 ゆっくりゆっくり、それでもあまり規模の大きくない水族館だ。一通り見終わる頃に外に出れば、帰るのにはちょうど良い時間だった。
 駅へと続く道を、雲雀と綱吉は相変わらず手を繋いだまま歩く。電車に乗り、再び並盛駅に着いた頃には、空は茜色に染まっていた。
 電車の中ではまた会話がなかった。しかし行きとは違い、それでも良かった。繋いだ手が暖かかったから…でも、それももう離さなければいけない。
「あの、雲雀さん…俺…」
 リボーンとの約束を、果たさなければならなかった。

「俺、雲雀さんが好きです。大好きです!」

 約束は最後に雲雀へ告白をすること。
「だから、今日は本当に楽しかったです!ありがとうございました!」
 雲雀を見ると、余程驚いたのだろう。呆気にとられていた。雲雀でもこんな顔をするのだと、綱吉はちょっと可笑しかった。だから、最後は笑顔でいられた筈だ。
「じゃあ、さようなら!」
 ペコリと頭を下げて、走り出す。繋がれていた手は、するりと抜けた。
 耳まで真っ赤になった綱吉が走り去る姿を、雲雀は呆然と見送っていた。





「で、返事は聞いてない…と?」
「うん、だって、断られるのは分かってるから、付き合って欲しいとかは言ってないし…」
 家に帰った綱吉は、告白をちゃんとしてきたことをリボーンに報告していた。
 しかし、この結果に家庭教師は納得しなかったようだ。
「この、バカツナが…」
 ペシリと叩かれる。
「な、なんでだよ!ちゃんと告白しただろ?スッゴく勇気出したんだぞ!」
 ありったけの勇気で告白したのに、駄目出しされては立つ瀬がない。だが、リボーンはわざとらしく大きな溜め息を吐いた。
「まったく、お前ら二人して世話のやける…」
「へ?二人って…?」
 二人と言われた意味が解らない綱吉の疑問に、リボーンは応えなかった。

「ま、もう放っておいてもアイツは自分でなんとかするだろ」

 変わりに呟かれた声はとても小さく、綱吉には聞こえていなかった。






「しまったな…」
 うっかり声に出した呟きは、手を離してしまったことへなのか、せっかく用意した誕生日プレゼントを渡し損ねたことへなのか、それとも、先に告白されてしまったことへなのかは分からない。多分全部なのだと思う。
 僕、雲雀恭弥のところに、突然赤ん坊がやってきたのは五日前のことだ。彼は、来た早々唐突に、こう切り出した。

「お前、ツナのことが好きだろう」

 あの赤ん坊は強くて気に入ってはいるけど、時々人の心を見透かしたことを言うのは気に入らないね。
 そう、赤ん坊の言う通り、僕は沢田綱吉が好きだ。最初はちょっと気になるだけの草食動物だったのに…自分でもこの感情は驚きだ。でも、好きだと気付いてしまえば、理由はどうでもよかった。彼女が僕を怖がっていることの方が余程の問題だ。出会い方が最悪だったことを考えれば、仕方がないのだけれど…
 だからといって、どうしてたらいいのかなんて分からない僕に、赤ん坊がデートの話を持ち掛けてきた。
「上手くエスコートできれば怖がられないようになるぞ」
 但し、それには最後に告白するという条件付きだった。
 どうも赤ん坊の手の上って感じで気乗りはしなかったんだけど、僕が引き受けないと他のヤツに話を回すっていうんだ。それは気に入らないから引き受けた。その日は沢田綱吉の誕生日だし、そんな日に彼女を独り占めできるのは悪くないからね。
 実際、デートも悪くなかった。私服の彼女は可愛かったし、今日は僕を怖がっていなかった。笑顔もたくさん見れた。手も…繋げた。
 でも、最後にこれだ。まったく君は面白いよ。沢田綱吉。
 さて、僕をこんな驚かせたんだ。君にも驚いてもらわないとね。赤ん坊との約束も、今日中なら間に合ったことになるだろう。
 すっかり陽の暮れた街を、僕は沢田家に向かい歩き出す。
 綱吉に、好きという気持ちを伝える為に…

end
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