『檻の獣、籠の鳥』

□そして恋に堕ちる…
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「本当に可笑しな子…」
 雲雀はひとしきり笑うとぼそりと呟いた。
 七日間の自宅謹慎とはいっても、ずっと此処にいるつもりはなかった雲雀だったが、もう少しあの少女を見ていたいと思い始めていた。

 笑われた!また、笑われてしまった!
 綱吉は厨房へと向かいながら心の中で大反省会をしていた。
(あ〜もぅっ何やってんだよ!俺のバカ、バカーだいたい…あっ違う、俺じゃない…私って言わないと…)
 老夫婦は許してくれたが、さすがにこの家の主である雲雀の前では、この言葉使いは直さなければならないだろう。そのことを考えると溜め息が出るが…
(恥ずかしかった…でもあれを笑ってくれるなら仲良くなれるかもしれない)
 綱吉はとりあえず良い方に考えることにした。

「おはようございます」
 いつものように朝の挨拶をしながら厨房へ入った。
 朝食の支度をしていた老夫婦が、弾かれたように振り返える。
 心配気な二人に始めはキョトンとしていた綱吉だったが、ああ、と頷き何も無かったのだと告げる。自分が失敗して笑われただけなのだと言うと
「恭弥様が笑ったのですか?」
「え?うん」
 老夫婦は顔を見合わせる。雲雀も笑わない分けではないが、大抵の場合それは獲物を見つけたときの獰猛な笑みで、綱吉の見たような笑い方は幼い頃から殆どしなかった。
 しかも昨夜はあんなに機嫌がわるかったのに…だ。
 この事実は老夫婦を驚かせると同時に、希望も抱かせた。
 老夫婦にとって綱吉は孫のように可愛い存在になっていたが、幼い頃から世話をしてきた雲雀も大切な主だった。
 雲雀と綱吉にとって一番良いのは、二人が上手くいくこと…そう思い、さりげなく綱吉に、雲雀の好感度が上がる様なこと言ってみたりした。
 問題は雲雀の方である。
 だが、さすがにまだ十五の少女に酷いことはしないだろうと思っていた。
 しかし、昨夜の機嫌の悪さから一時はどうなることかと思ったのだが…
 長年連れ添った老夫婦はお互い目だけで頷き合う。
(これは、いけるかも!)
 …と。

 綱吉は寝室にある円テーブルに朝食を並べていた。
 雲雀はいなかった。隣のシャワー室から音が聞こえるので、綱吉が出ていった後に入ったのだろう。
 いつも食事は老夫婦と三人でとるのだが、勧められて雲雀と二人ですることになった。
 二人きり…緊張する…だが…
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