◇◇◇

□花より団子?
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 言いながら、指輪を着けた指に軽くキスを落とす。
「ふひぁっ…や…あ……だ、駄目じゃ…ないです」
 真っ赤になりながらも、綱吉はそれを受け入れた。
 雲雀はなるほどと思う。今まで誕生日に関わらず、プレゼントといえば食べ物か日用品だった。しかしたまにはこういうのも悪くない。
 だが、悪くないと思う一方で、やはり何か足りない気がするのはどうしてだろうか。
 そんなモヤモヤとした疑問を残しながら食後に出された珈琲を飲み、じゃあそろそろ帰ろうかとなったとき、雲雀はふとそのことを思い出した。
「…ああ、そう言えば綱吉」
「はい?」
「本当はプレゼントにさつまいもを用意してたんだ。今日は持ってこなかったけど、それも明日あげるよ」
「さつまいも…」
 突然出てきたお手頃食材の名前にキョトンと目を瞬かせた綱吉だが、すぐにパァと花が開くような笑顔を見せる。瞳だけではなく顔全体が輝く表情に、雲雀は、ああ、これだ。と思った。この笑顔が見たかったのだと今までの物足りなさに納得する。
「ありがとうございます!さつまいもかぁ…また何か作って持って行きますね」
 花より団子というか、明らかに指輪よりもさつまいもの方が反応が良い。それは女性としてどうなのだろうか。しかし雲雀はむしろ嬉しかった。自分が最初に選んだ物が一番喜んで貰えたのだから嬉しくないはずはない。
「うん。楽しみにしてる」
「はい!」
 最高の笑顔を見せてくれた恋人に、雲雀も満足げに笑う。
 こうして、綱吉の誕生日は今年も幸せに過ぎていったのだった。





 指輪を着けた左手を見ながら、俺は顔がニヤケるのを止められないでいた。普段アクセサリーにまったく興味はないけれど、大好きな人から貰った物は別だ。見ているだけで幸せな気分になれる。
 いきなり連れて行かれた高級レストランも初めはびっくりして緊張しちゃったけれど、料理は美味しかったし夜景も綺麗だった。しかも明日はさつまいもが貰えるんだって。すごく嬉しい!こんなこと言うと食い意地が張ってるって思われるかもしれないけれど、指輪より嬉しいかもしれない。だって、食材ならもう一つプレゼントが貰えるんだ。
 だから俺はさつまいもで何を作るか真剣に考える。それを食べて美味しいと言ってくれる雲雀さんの笑顔こそが、俺にとって最高のプレゼントなんだから!

end
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