◇◇

□雲雀家の結婚式
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「…綱吉」
「は、はい!」
「それ、よく似合ってる。綺麗だよ」
「ふぇ!?や…そんな…雲雀さんの方が似合ってます。カッコいいです!」
 可愛いとはよく言って貰えたが、綺麗は初めてだった。嬉しくて頬が緩む。
 綱吉としては、もう少し雲雀の晴れ姿を見ていたかったのだが、式が始まるとそれどころではなくなってしまった。
 式自体は単純だった。神主みたいな人が現れて、祝詞を唱える。それだけ。三三九度も指輪の交換もキスもない。むしろ、その後、挨拶に来る人々の相手をする方が大変だった。こちらも披露宴と同じく、御披露目の意味合いが強いのかもしれない。
 次々と挨拶をしにやってくる参列者に挨拶を返しながら、綱吉は妙な違和感を感じていた。しかし、それが何なのかを考えている隙がない。ただ、最後に来た参列者には、違和感と共に既視感を覚えた。

 あれ?この人…どこかで会ったような…気のせいかな?一度会ったら忘れそうもないし…

 会ったような気はする。しかし、その参列者は一度見たら絶対に忘れないだろう容姿をしていた。
 性別は多分男性。和服で髪が長いが、特徴的なのはその色だ。まだ若そうに見えるのに、真っ白だった。しかも瞳が赤い。いわゆるアルビノというものだろうか。
 光の具合からか、白く輝いているような姿を綺麗だなぁと見つめていると、その白い人は穏やかに笑いかけてくる。
「綱吉さん。あの子をよろしくお願いしますね」
「え?あ、はい!」
 雲雀をあの子と呼ぶということは、親族なのだろうか。だが雲雀は、その呼ばれ方が気に入らなかったのか、それとも存在自体が気に入らないのか、殺気を含んだ視線で白い人を睨み付けていた。
「ねぇ、これで満足?」
 いつもより低い、雲雀の声が問う。何が満足なのか、綱吉にはさっぱり分からなかったが、白い人が嬉しそうに頷いたことに何故かホッとする。
 こうして挨拶が終わった後、お酒や料理が振る舞われてちょっとした宴会になったが、雲雀と綱吉にゆっくりしている時間はない。場所を移して、今度は披露宴だ。

 なにも起きずに、平穏無事なまま終わりますように!

 披露宴に集まる面々のことを考えると、そう願わずにはいられない。そんな綱吉を、先ほどの白い人が静かに見つめていた。





 披露宴会場のホテルは不穏な空気に満ちていた。華やかな席のはずなのだが、招待客のほとんどが堅気ではない外国人となれば、やはり和やかにとはいかない。

 こ、怖っ!!

 白無垢からウェディングドレスに着替え、司会の合図と共に雲雀と並んで入場した綱吉は、先ずそう思った。緊張に恐怖が混じり、雲雀と組んでいる腕にも自然と力が入る。
「綱吉、大丈夫だよ」
 隣を見上げれば、自分を安心させるように優しく笑う雲雀が居る。その服装は和装からタキシードに変わっていた。

 こっちも素敵だなぁ…

 雲雀を見ていると、緊張も恐怖も少し和らぐ。
 披露宴といっても、派手な演出がある訳ではなかった。形式としてはむしろ立食パーティーに近い。そしてここでも重要なのは、各方面の方々への挨拶だった。これがまた大変だったのだが、リボーンというお目付役が常に監視しているので、迂闊に手も抜けない。
 それでも、普段あまり会えない親しい人達との会話は楽しかった。ディーノはまるで父親のように泣き出してしまうし、ヴァリアーの面々は相変わらず騒がしかった。
 綱吉が心配していたようなトラブルも今のところ起こっていない。一番ヒヤッとしたのは、ザンザスが何かにキレて、銃をぶっ放しそうになったことくらいだろう。
 そんな中、綱吉はある人物を見つけて、動きを止めた。
「あの人…」
「綱吉、どうしたの?」
「あそこに居る人、雲雀さんちに居た人ですよね」
 会場の角の方に、雲雀家で最後に挨拶をしてくれた白い人が居る。こちらの招待客でもあったのか、それとも着いてきてしまったのか分からないが、それよりも不思議だっのは、白い人の目の前にいる人物がまるで固まってしまったように動かないことだった。その固まり方に見覚えがある気がして、綱吉は首を傾げる。
 すると、白い人と目があった。穏やかな表情で、ニコリと笑いかけてくる。次に彼は雲雀へと目線を移す。その顔つきは一転、厳しい表情になっていた。それを見た雲雀は何かを察したように頷く。
「赤ん坊…」
 近くに居たリボーンを呼ぶと、二人は何やらひそひそと話し込み、やがてリボーンは音もなくその場を離れた。
「え…と…なにかあったんですか?」
 綱吉には、どうも状況が見えない。
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