◇◇

□雲雀家の結婚式
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「トラブルって…いや、それより俺はマフィアにはならないからな!」
 リボーンと話していると、結局マフィアになるならないで揉める。この赤ん坊は、何が何でも綱吉をマフィアのボスにしたいらしい。
「ま、どっちにしろもう色々決まっちまってるからな。後戻りはできねーぞ」
「なっ…なに勝手なこと言ってんだよ!だいたい決まってるって何がどうなってんの!?」
「ん?そうだな。お前にもそろそろ話しておくか」
 そう言ってリボーンが話し始めた詳細に、綱吉の表情は次第に引きつっていった。
 リボーンによると、結婚式は二部構成になり、式自体は雲雀の家で執り行われる。その後、会場をホテルに移し披露宴をするのだが、問題はその披露宴だった。
「披露宴はボンゴレ主催だ。マフィア関係者に向けての御披露目ってとこだな」
「御披露目って…雲雀さんはそれでいいって言ったの?」
 あの群れが大嫌いな人が、御披露目のための披露宴なんて承諾するはずはない。綱吉はそう思ったが、リボーンは頷き肯定した。
「それが交換条件だったからな」
「交換条件?」
「最初、家光はお前と雲雀の結婚には大反対だった。というより、交際自体、絶対に許さないって喚いてたな」
 綱吉が思っていた通り、家光は反対していた。しかし、ボンゴレ主催で披露宴を開くことを条件に、認めたのだという。
「あげく、交際そのものを妨害してやるとか言い出したんでな。俺が間に入って何とか今の形に治めてやったんだぞ」
 ニヤリと笑うリボーン。その悪い顔に、披露宴の仕掛け人が彼であることを綱吉は確信した。自分をボンゴレボスにしたいこの赤ん坊が、結婚式という絶好のチャンスを逃すはずがない。

 ダメだ!コイツに何を言っても…やっぱり雲雀さんにちゃんと言おう!

 やはり結婚式なんて早すぎる。そこに極悪家庭教師の企みが加わるとなれば尚更だ。綱吉は諦めないで、もう一度雲雀と話し合ってみることにした。





「雲雀さん。結婚式は延期にしてください!」
 翌日。昼休みに応接室へとやってきた綱吉は、お弁当を開けるのも後回しにしてそう頼んだ。中止ではなく延期にしたのは、その方が聞いて貰えると思ったからだ。しかし、これに対しての雲雀の答えは明確だった。
「嫌だ」
 あっという間に却下されてしまう。
「いきなりどうしたの?」
 訝しげな雲雀に、綱吉はリボーンから聞いたことを話す。
「ああ、それね」
「それねって…マフィアの一員だって認めちゃうようなもんですよ!いいんですか!?」
「マフィアになりたくないの?」
「当たり前じゃないですか!!」
 それは雲雀も同じはずだ。組織に組み込まれることを良しとするなど、彼らしくない。
「だいたいなんであんな条件を飲んでまで結婚式したいんですか?誕生日プレゼントなら俺、頑張っていいものを用意します。結婚式だって、大人になったらでいいじゃないですか」
 母親は認めてくれているのだから、いくら父親の反対があっても大人になれば普通に結婚できるのではないだろうか。
「………そうだね。君がプロポーズしてくれたあの日…」
 いや、あれはプロポーズではなかったんですが…とは思ったが、色々ややこしいことになりそうなので、綱吉はもうそれを訂正するつもりはない。
「ああは言ったけど、無理ならもっと先でも構わないと思ってた」
「だったら、そうしましょうよ」
「でも駄目なんだ…」
 雲雀はそう言いながら、おもむろに立ち上がると、今まで向かい合わせで座っていた席から綱吉のすぐ横に移動した。
「綱吉…」
 雲雀の手が綱吉の肩に掛かり、力が込められる。
「雲雀…さん?」
 しかしそれ以上は何もせず、何故かまったく動きがない。綱吉は首を傾げた。そういえば、以前にもこんなことが何度かあったなと思い出す。固まったように動かなくなって、しばらくすると大きく息を吐いて手を放す。そして今回も、おなじ動作が繰り返された。
「綱吉。やっぱり結婚式は絶対にする」
「ええ!?」
 いったい何がどうなると、そういう結論に達するのか。今の行動と関係があるのか。綱吉には訳が分からない。ただ、見上げた雲雀はどこか辛そうに見えて、綱吉は何も言えなくなってしまった。





 三月に入り、雲雀が中学を卒業した。綱吉は四月から受験生だ。そうなれば、リボーンによる鬼のような受験勉強のスケジュールが控えている。だが、そんな状況でも結婚式の準備は滞りなく進んで行く。
 桜が散り、ツツジが咲き始めた四月の中頃、雲雀の家で最後の衣装合わせをした綱吉は、その後縁側でお茶をご馳走になっていた。
 綱吉はここから見る庭の景色が好きだ。雲雀家では常に何かしらの花が咲いていて、見る者を楽しませてくれる。ぼんやりとお茶を飲みながら、綱吉はこのまま雲雀の家に嫁ぐのも悪くないなぁなんて思うようになっていた。
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