『檻の獣、籠の鳥』
□再会
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その日。
朝から綱吉は落ち着かなかった。
正確に言えば、ここ何日かこの奇妙な感覚はつきまとっていたのだが、この日は特に酷かった。
とにかく落ち着かない。
寝室をウロウロし、ベッドに転がる。大きな溜め息を吐くと、再び部屋中をウロウロ…その繰り返しである。
かといって何かする気にもなれないのだから始末に悪い。
(ん〜…何なんだろうな〜コレ…)
綱吉にも訳が分からない。嫌な予感ではないと思うのに、どこか不安もある。
(嬉しい?…でもそれは当たり前だよね。だって恭弥さんが帰ってくるし!)
今日は久しぶりに雲雀が帰宅する日だった。嬉しくない筈がない。綱吉の落ち着きなさの原因の一端は、明らかにコレだろう。
(でも、他にも…何か…あ〜ダメだ!わっかんない!!)
綱吉の勘は、危険度が高ければ高い程鋭くなる。
だから今回のコレに危険は無いはずだと、自分を納得させた。
その時ふと、外が気になった。
何故かは分からない…が、このまま部屋にいても仕方がない、気分転換に庭でも散歩しようと思い立ち、綱吉は部屋の扉を開けた。
雲雀家の庭はとにかく広い。ゆっくり歩けばかなりの時間が潰せた。今は真冬で緑は少ないが、通いの庭師達が季節毎に楽しめるように手入れをしてくれる為、何度見ても飽きないこの庭が綱吉は大好きだった。
のんびり散策していると、いつの間にか高い塀に突き当たる。
塀のむこう側はちょっとした森が広がっているのだが、そこも含めて雲雀家の土地なのだと聞いたことがある。もっとも綱吉には、それがどれほどのものなのか実感が湧かない。
ただ、普通のレンガ造りに見えるこの塀は、見た目よりかなり丈夫にできており、様々なセキュリティーが施されているらしい。塀の上部には高圧線が張られているので、気をつけるようにと言われた。
実際それは綱吉の手の届かない位置に張られているので、ここで触ったぐらいでは当然何ともないのだが、やはり少し怖い気がして綱吉は塀から離れようとした。
が、その時…
立ち止まる。塀の向こう側から人の話し声が聞こえた気がした。
確かめようと塀に近づく、すると突然、こちらでもはっきり聞こえるぐらい大きな怒鳴り声が響いた。
「だぁっめんどくせー!!こんなん今すぐぶっ壊せばいいじゃねーか!」
綱吉は驚愕する。