『檻の獣、籠の鳥』
□そして恋に堕ちる…
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翌朝、雲雀はいつもより少し遅い時間に目を覚ました。
見慣れた軍の宿舎ではなく自宅なのを確認し、何故自分が此処に来たのかを思い出す。
一瞬、昨日の不機嫌さが戻ってきたが、すぐに花嫁である少女のことも思い出し、可笑しくなる。
(顔は可愛いのに…変な子)
それが雲雀の綱吉に対する最初の印象だった。
当の綱吉はベットにはいなかった。すでに起きて寝室から出ていったのかと思ったが、雲雀の常人より優れた聴覚が微かな寝息を聴き取る。
ベットの端により下を見ると、昨夜落ちた場所で少女は丸くなって眠っていた。
いくら空調が効いているとはいえ、こんな所で寝ていて寒くないのだろうか?…そんな雲雀の疑問に応えるかのように、綱吉は大きなくしゃみをした。
「ぶぇっっくし」
これまた見た目と反比例した可愛くないくしゃみ…
そして、その自らのくしゃみで綱吉は目を覚ました。
昨夜と同じく、ゆっくりとした覚醒…やはり最初は雲雀を見ても反応がない、しかし、徐々に意識がはっきりし、雲雀を完全に認識したとたん、再び奇声を発し後退ろうとした…が、今回はなんとか踏み止まったようだ。
今度は壁まで行ってそのまま激突するのでは…と思っていた雲雀は、少しがっかりする。
しかし、綱吉はある意味、雲雀の予想を上回っていた。
硬直状態だった綱吉は、昨夜言い損ねたことがあるのを思い出す。
(あっでも、今更お帰りなさいもないよな…え〜と…今は朝だから…)
「お…おひゃおうごじゃいまふ!」
…おはようございます。と、もちろん言いたかったのだが、寝起きのうえ、かなり緊張していた為に思い切り変な言葉になってしまった。
「あっ…や…あのっ…」
しかも慌てて言い直そうとしたその時…
ぐぅ〜
綱吉のお腹が鳴った。
確かにお腹は減っていた。朝、お腹が減るのは健康な証拠だ。
だからってこんなときに鳴らなくてもいいだろう、と綱吉は思う。
雲雀を見ると、肩が小刻みに震えていた。もちろん、悲しいのでも、怒っているのでもない。
綱吉は顔を真っ赤にして涙目になっている。
「す…すみません!あ…あの…ち…朝食の支度を手伝ってきます!!」
恥ずかしさに耐えきれず、そう言って脱兎のごとく寝室を出て行こうとする綱吉の背に、堪えきれなくなった雲雀の笑い声がぶつかった。