ハガレン2

□年越し
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(‥となれば、やはりハボック達なのか。ハボックであれば、中尉がなびくはずがない。
ヒューズは今年、家族3人で過ごすと言っていたな。
フュリーはせいぜいハヤテ号くらいしか誘えないだろう。いや、待て!グラマン中
将が言われていたな。将を射とばんと馬を欲すと‥まさかハヤテ号を使って!!)

そこでマスタングは立ち上がった。

「‥大佐?」

ホークアイが驚いて、マスタングを見つめた。
そんなホークアイに応えず、マスタングはホークアイの元に歩みを進めた。

「どうかされましたか?」

マスタングはホークアイの前で止まると、ホークアイの肩を掴み言った。

「フュリーに君はもったいない」
「はっ?」

ホークアイは眉を寄せ、困惑した表情でマスタングを見た。

「どういう意味なのですか?」
「今夜、君と過ごす予定だったのだろう?‥フュリーと」

その言葉を聞いて、ホークアイは身体を震わせ笑いだした。
必死で声を押し殺しているようだ。
たまに息が漏れる音が聞こえる。
それに困惑したのはマスタングだ。
いきなり笑いだしたホークアイに訳が分からず、困惑するばかりだった。

ようやく笑いが収まったホークアイは息を落ち着かせ、質問した。

「どうしてそうなるのですか?」
「ち、違うのか?」
「違いますよ。フュリー曹長は今夜、婚約者と過ごすようですよ」「そうか‥」

その言葉を聞いてマスタングは安堵したが、同時に中尉の相手の検討は二歩ほど後退である。

「それで、どうしてそうなったのですか?」
「それは上官としてだな‥その、部下を心配して‥‥その、だな‥‥」
「上官として、ですか」
「いや、うん、その‥‥えーと‥」
ホークアイがまさか聞き返してくるなどマスタングにとっては予想外だった。
しどろもどろになりながら、必死で上手い答えを探すが見つからない。
それが面白かったのか、ホークアイは吹き出した。

「吹き出すなくても良いじゃないか‥‥」
「すみません‥くすくす」

このホークアイの行動はマスタングにとって、相当ダメージを与えたようだ。
それは役立たずや無能と言われるのと同じくらいに。

「アームストロング少将ですよ」
「えっ?」

打ちひしがれるマスタングにホークアイが告げた名は、やたらマスタングを目の敵にしてくるオリヴィエ・アームストロングだった。

「私が年を越す予定だった方です」
「なんで少将なんだ?」


マスタングは納得いかない。
現在、北にいるはずのアームストロング少将が何故東にいるホークアイを誘うのかが。

「以前から度々、お誘いはあったのですがなかなか応じられなかったんです。それで流石に今回はお受けしないわけにはいかなかったんです」
「現在、少将は北におられるだろう」
「少将は今年の年越しをアームストロング家にて過ごされる予定なんです。その
際、話し相手として来て欲しいと」
「アームストロング家は中央で、君は東にいるのにか?」
「元々は昨日が仕事納めでしたので、今朝にはアームストロング家からの迎えが来て行く予定だったんです。しかし、一昨日の段階で年内に終わらせる筈だった仕事が終わっておらずお断りしたんです」
「それはすまなかった‥‥」


マスタングは聞かなければ良かったという後悔と聞いて良かったという安堵の矛盾を一辺に感じた。
何でだ、と不思議に思いながらも気にしないことにした。

「別に良いです、元々乗り気ではありませんでしたから。大佐の方こそ気を使わせて申し訳ありませんでした」
「君が謝る事はない。そうだ、中尉このあと暇か?」
「いいえ、ハヤテ号が家で待ってるので出来る限り早く帰りたいです」
「そうか、じゃあ、一旦中尉の家に行ってハヤテ号を連れて来よう」
「はっ?」

わけの分からないというホークアイに構わず、マスタングは話を進めた。

「それから車で初日の出を見に行こう」
「何でそうなるのですか?」
「詫びだよ。せっかくの年越しをこんな場所で過ごさせた」
「結構です。私は初日の出よりも、帰って寝たいので」
「運転は私がする。君は隣で寝てれば良い」
「大佐もお疲れでしょうし、上官に運転させるわけには‥‥」
「私は昼に仮眠したから大丈夫だ。それとプライベートなら良いだろう?それなら問題ない」

どうだ?というマスタングに、ホークアイは仕方なしに了承した。

「ただし、書類を終わらせてからですよ」

と、付け加えることも忘れなかった。


「勿論だとも」


マスタングは力強く頷くと、そそくさと席に戻った。
ペンを持ち、残りの書類に勢い良くサインをし始めた。

それを見てホークアイは微笑むと、壁に掛けてある時計を確認した。

0時(新年)まであと40分だ。


end.
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