お題

□友情・切ない系で5のお題
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【Bすれ違い】


今日彼を見つけた。

父の弟子だった男であり、

そして父の「焔」を受け継いだ男だった。

彼に焔を教えたのは私だ。

彼に焔が必要だと思ったから。

そんな彼と今日すれ違った。

彼の目は、私など見ておらず、何も映し出していなかった。

彼は私のことなど気づいてないだろう。




彼がここにいるのは知っていた。
この悪夢に国家錬金術師として、赴くことを出発前に彼の口から聞いた。
数年ぶりの彼だった。
まさか私がいるなんて彼は思いもよらないだろう。
私も可能性としては考えていたが、こんなにずるずるとこの悪夢に身を置くとは思いもよらなかった。

彼に声など掛けなかった。
私はただの士官生、彼は国家錬金術師。
立場が違う。
私は替えが利くが、彼には替えなどない。
それが私と彼だった。


「駄目ね・・・」

私の呟きに応える者はなく、虚しくどこかへ消えていく。
その時また敵襲がきた。

本来守るべき罪無き民を手にかけるのは、苦しい。

間違っているそう思っても、生きるために銃口を向ける。

軍を信じた私が、馬鹿だったのだから。

だけれど、何よりも、

これは私が決めたことだから。


                                     END.
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