お題

□友情・切ない系で5のお題
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【A出逢いと別れ】

彼女と出会ったのは、私がまだ世の中を信じていたときだった。

あの頃の私は青かった。

そして彼女も若かった。

砂と埃まみれでありながら、いつも真っ直ぐだった。

いや、それしか知らなかったからなのだろう。

「マスタング少佐」

彼女はいつも礼儀正しく、私を呼んだ。

そんな彼女が愛おしいと思うだなんて、その頃は思いもしなかった。

時が流れても、彼女は昔と変わらずに私の名を呼ぶ。

「あなた…」
と。

彼女の髪は白くなり、しわも増えた。

私もその分年を重ねた。
己のはりのない手を彼女に伸べながら言った。

「リザ、君は幾つになっても美しいね」

彼女は頬を染め、否定するがそれすらも愛おしかった。

もうすぐ私達は別れないといけなくなるだろう。
それは天命なのだから仕方がない。

私達は別々に生まれ、共に生きて、また別々に死ぬ。

それでも共に生きれたことに感謝し、私は残り少ないだろう人生を彼女と歩む。

「遅刻しますよ、閣下」
あいつとの約束を果たし、得た名で彼女は呼ぶ。

それは昔と変わらず、真っ直ぐな声だった。

終わり
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