ハガレン2

□涙を掬い
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大総統がいなくなり、国は混乱に陥った。
月日は流れ、全てが元道理ではないが、少しづつ国は新たな道を歩み始めていた。


「北へ行く」

ロイの唐突な言葉に、リザは頷くことしかできなかった。

「今までありがとう、君は自由になると良い」

ロイはリザの顔を見ずに、部屋から出て行こうとした。
それを引き止めたのはリザだった。

「いつ、行かれるのですか?」
「明日、朝一番の汽車で」
「そうですか‥‥」

動揺を隠せないリザに対し、ロイは振り向かないまま「すまない」と謝った。

リザは頷くことは出来なかった。

部屋に一人残されたリザは、ロイの力になれなかったことを痛感した。
溢れる涙は尽きることはなかった。


翌日、ロイは北へ向かった。
リザは駅に向かうことも、別れの言葉を交わすこともなかった。
代わりに、リザは駅に向かうロイを、窓越しに見送った。

ロイがいなくなり、家中見回しても、ロイの物は何もなかった。
ロイはメモすらも残さなかった。
ただ家をでる前に、微睡みの中にいたリザに口付けをしただけだった。


未だに残る生暖かい感触に、リザはそっと唇をなぞった。

「力になれなくて、すみません」

リザは再びロイの側に寄り添えなかったことに嘆いた。
それをハヤテ号が慰めるように、体を擦り寄せた。

「大丈夫、大丈夫よ」

その言葉とは裏腹に、リザの涙は溢れ続けた。




リザはロイを待つと言う選択をし、軍に残った。
軍に残ったリザに誰も何も言わなかった。


夜が更け、駅には誰もいなかった。
最終の汽車はとっくに発車しているのだから当然だった。
リザは誰もいない駅に、一人ベンチに腰掛けていた。
こうして、リザはたまに誰もいない駅に来ていた。
今いる駅からロイがいる北とは遙か遠くだが、ロイが北へ向かった駅と言うだけでどこかしらロイと繋がっているように感じられるのだ。

「気休めね‥」

気休めだと頭ではわかっていても、ここへ来ることは止めれなかった。

「帰ろう」

口に出さなければ、ロイが帰ってくるまでここで待ち続けてしまう。
リザはそんな自分を情けないと思いながら、それでも駅に来ることをやめられなかった。


すっかり冷え込み、冷たくなった手をさすり合わせ、白い息を吐いた。
リザは立ち上がり、どこまでも続く線路を見つめた。


「また来ますね、大佐」

線路の先にいるはずのロイに、敬礼するとリザは駅を後にした。

リザの声は、闇夜に包まれ消えていった。


end.

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