ハガレン2
□握りしめた拳
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蝋燭の灯りを頼りにして、リザは横たわる父を眺めていた。
「‥‥お父さん」
返事はない。
当然だ、彼の心臓はすでに動くことを止めているのだから。
リザは今日、正確には昨日父を亡くした。
わけのわからないうちに、医師を呼んで、診察して、父が死んだ。
体が弱かったから長くは生きれないことをリザは覚悟していた。
しかし、あまりにも呆気ない出来事にリザは受け入れかねていた。
そんなリザをロイは見守ることしか出来なかった。
「リザ‥」
ロイの疲れきった表情に、普段の爽やか好青年の姿はない。
「……父が死にました」
「ああ‥‥」
リザはロイの方へ振り向きもせずに話し始めた。
「父は母を亡くしてから、私の存在など無関心でした。私も一心不乱に錬金術に
打ち込む父が恐ろしくて、自然と距離を置くようになりました」
「……」
「そんな私達親子の繋ぎ役となってくださったのがマスタングさんなんです」
「……私は、そんなつもは‥‥」
続く言葉を飲み込んだ。
なぜなら、リザが涙をこぼしていることに気が付いたからだ。
涙は、頬を伝って手の甲へと流れ落ちた。
「マスタングさんがそんなつもりでなかったとしても、父と私を繋いでくれました。だから、私達は親子として、別れることが出来ました‥。ありがとうございます」
リザは饒舌だった。
それは父の死に対する悲しみを偽っているように、ロイの目には映った。
「……私は‥‥」
続く言葉がでてこなかった。
今のロイが言えることは、礼を言われるようなことはしてないことだ。
しかし、それを今のリザに言うのは不適切なような気がした。